第26話 ここが父さんの新会社らしい
「あれが新市場かあ」
「ええ、もう動いているというか始まっているわね」
「ちょっと寄って朝食でもって」「この格好で?」「えみとさん、ごめんなさい」
という感じでみんなでジョギング、
まだ春の午前4時台は寒いのだがみんな元気だ、
約一名、ママチャリで寒そうにしているハーフは居るけど。
「うう、寒いデース」
「おケイさん、もうちょっと走ると屋内プールよ」
「それはそうと陽菜ちゃん、しっかりついてきてますね」「リョーちゃん、はしもっちゃんが速度落としてくれてるから」
えっこれで?!
僕は視線を陽菜ちゃんから景香お姉ちゃんへ、
街灯の下、笑顔が見える、ずっとニッコニコで走ってるな、ポニーテールを揺らしながら。
「私はもっと速度上がっても良いわ」
「こんな夜中みたいな時間でも?!」
「栃木の田舎はもっと暗いわよ」「逞しいね」
懐中電灯でも持って走ってるのかな、
頭にはめるタイプもあったよね確か。
「台風の時とか、普通に田んぼの様子を見に行くし」
「それはやめて」「もうやらないわ、こっちに来たから」
「農園の仕事って大変だったよね」「もう自由だわ、自由よーーー!!!」
あーあ、えみとさん抜いちゃった。
「よっぽど溜まってたのね」
「そう言う陽菜ちゃんも溜まってたりは」
「何の話?」「ストレスとか」「着ぐるみ脱がそうとする子供とかヒップアタックしてるわ」
いいのかそれ。
「ケイさんはストレスとかは」
「夜のお店って、たまにcrazyなお客さんとか居るのよ」
「例えばどんな」「目の前でお札をfireしたり」「あっそれ教科書で見た事ある!」
そもそも夜のお店って!
「えみとさんは」
「工場がね、大変だったの」
「あー」「でも、もう大丈夫!」
とかなんとか走っているうちに倉庫街へ。
「ふふ、ここよプロレス会場」
「本当だ、ってこれもこれで倉庫にしか見えない」
「200人収容、インディレスラーの聖地ね、元はとある女子プロレス団体の道場だったらしいわ」
というえみとさんの解説は良いが、
外からだとリングが見えないな、まあ午前5時前だし。
「では目的地へ行きまSHOW!」
「ケイさん、どこ行くの、ってその籠に入っているのは」
「OH! BENTOデス!!」「お弁当かあ、って誰の?」「行けばわかりマース」
あっ、倉庫街なのに駅前にホテルがある、
とか思いながら進むと急に一軒屋が現れた。
「こんな所に家が」
「ふふ、これ家じゃ無いわよ」
「えっ、でもどう見ても」「ここ埋立地だから住宅規制で住めないのよ」
見ると表札の所に、
大きく『クリティカルヒット・ザ・ワールド』って書かれている。
「あー、ひょっとしてここが」
「そうよリョーちゃん、建前上の、ウチの会社よ」
「intrusionシマース」「あっ、その鍵は!」「会社のkey!」
入っちゃった、
中はうん、本当にオフィスだ、
机が並んでて電話がそれぞれにある。
(ノートパソコンは無いな)
本当、なんていうかダミー会社って感じ。
「おケイさん、そこのテーブルの上でいいんじゃない?」
「OK! 置きましター」「その弁当はええっと、大くんの朝食?」
「ふふ、そうよ、昨夜のうちに会社のLINEで知らせてあるから起きたら食べるでしょ」
野沢さんの弟さん、
奥で寝ているのかな、
まあこんな早朝にドカドカ入って行く訳にはいかないし。
「あっ、これね」
「景香お姉ちゃん、端のその箱は」
「実家から届いた私の誕生日プレゼント、主に兄弟から」
昨日のうちに来てたんだ、
タワマンの住所じゃなくこっちにってことは、
実際に住んでいる場所を知られたくないのかな?
(ほんっと、逃げてきたって感じがするな)
それは良いけど箱が3個もある、
これケイさんの乗って来たママチャリでは、
籠に乗せきれないと思うんだけど、どうするんだろう。
「ふふ、じゃあ運びましょう」
「えっ、ひょっとしてこれ持ったままタワマンまで走るとか?」
「そんな訳ないわ、さあ涼一君、持って」「あっはい」「お姉さんも担ぐわよ」
僕と景香お姉ちゃん、
あと陽菜ちゃんで持って表へ、
そして、えみとさんについていくと……!
「あっこれ」
「社用車よ、ふふ、うしろのトランクへ」
「こんな便利なものが」「運転は私よ、陽菜さんは助手席へ」
ということで、
僕は後部座席へ景香お姉ちゃんと。
「じゃあMEは自転車で戻りマース!」
「あっ、会社に鍵はかけ直した?」「Naturally!」
「では帰りましょ、ふふふ」「片道のジョギングだったかあ」
まあ、父さんの新会社が観れて良かったよ、
何かお使いがあったら、僕もまた来ようっと。
「ちなみにこっちに電話が来たら」
「基本はタワマンに転送ね、来客はレイレイの弟さんが」
「そのために留守番かあ」「この距離なら少し待たせれば行けるし」
……これってやっぱり、
麗さんのストーカー対策もあるよね……??




