第24話 橋本園美渡さんはとにかく身体を動かしたいらしい
「ふふ、私はこの周辺を全部走っているわよ」
「えっ、えみとさん、走ってるって」「毎朝の日課よ」
「このマンションに引っ越したのって昨日じゃ」「それは涼一君で、私たち5人は先月から」
なるほど、会社の正式オープンが昨日ってだけで、
みんな丁度その日のに引っ越して来た訳じゃないのか、
確かにみんな、荷物の作業とかもうしてなかったもんな。
(という夕食、僕の隣は凪さんと麗さん、向い正面は、園美渡さんです!)
えっとそれじゃあ、
と斜向かいの景香お姉ちゃんに聞く。
「お姉ちゃんは昨日から?」
「私は中学卒業式の後、何度か来てたから」
「マンション自体はもう入れたんだ」「1月下旬には入居開始だったそうよ」
それにしては下のお店、
まだ『オープン記念』とか掲げていた店が何件か、まあ最近開店したのかな?
テナントはみんな埋まってたけどオープン時期が全部が全部、一緒という訳でもないか。
「それで、えみとさん毎朝って何時くらい」
「5時くらいかな、実家の工場も朝から手伝ってたから」
「あっ、それで」「掃除や備品の交換とか、人手不足だったから」
じゃあウチ来て大丈夫なんだろうか。
「えみとさんの変わりは」
「そのあたり、人は増えたみたい、人は」
「人は、って何か問題でも」「ほら、一から仕事を憶える必要があるから」
あー、それは大変だ。
「様子を観に行ったりは」
「してるわ、ここから比較的近いから」
「駅で何分」「走って往復1時間ね」「えええ」
じゃあ朝のジョギングついでに行けるんだ。
「ふふ、大丈夫よ、涼一君ファーストだから」
「良かった、いつでも実家に逃げ帰れると思うと少しプレッシャーが」
「あら、引き留めてくれるの? だったら私のポールダンスを1人で観に来てよ、部屋まで」
妖艶な笑み、
でもこれで21歳という、
ちょっと焦るな、話を変えよう。
「近所を走って何か気になる場所は」
「ジョギングスタイルだからお店とかには入れないけど、
市場とかプロレス会場とか走りながら見てるわ」「プロレス?!」
そんな場所あるんだ。
「公園でストレッチなんかもするけど、ふふっ、一緒にどう?」
「うん、考えておきます」「涼一、私も」「景香お姉ちゃんは体力あるからね」
「あら、じゃあ私も」「陽菜ちゃんは歩幅が」「じゃあバイクで先導しようかしら」「危ないですよ」
ていうか正直、
夜更かししたい日が結構あるから、
早朝ジョギングの参加はその日の気分でやりたい。
(やっとメイドの監視が無くなったんだから!)
とはいえ高校生、
夜中に変な所へ行くつもりは無いけど。
「あっでも朝食当番の時とかは」
「その時は、明日ね、朝4時からよ」
「4時かあ」「起きられる?」「……起きたら行くかも」
スウェットでいいよね?
「うふふ、じゃあ起きられる人だけで、ね」
でも結果的に、えみとさんと2人きりになったら、
早朝ジョギングデートかあ、運動不足の僕でついていけるかどうか、
中学で体育の授業以来かも、見るのは好きなんだけどねサッカーとか。
「雨の日なんかは」
「それでも身体を動かしたいから、近所の24時間営業ジムね」
「あっ、このマンションのは」「10時から20時まで、住民専用だから人目を気にしなくて良いわ」
ってそれ、どんな格好でやるんですかみたいな、怖くて聞けない。
「えみとさんとお付き合いする男性は、体力が大変そうですね」
「ついて行けないなら私が引っ張るわよ、ふふ、場合によっては私が全部」
「何の話ですかー!」「身を任せてくれれば大丈夫よ」「……つまりジョギングで、陽菜ちゃんがヘバったら、えみとさんが背負って走ると」「だったらタクシー使うわよ」
僕は自転車で参加、
とかは出来ないだろうなあ、
ていうか、新しい自転車買おうかな、籠付きのやつ。
(中学の時のは古いので置いてきました!)
思い入れとか特に無いし。
「ケイさんとか、ジョギング似合いそうだけど」
「Long-distance runningよりも、Sprintデスネー」
「短距離派かぁ」「YES! でもオシャベリしながらゆっくりならNot entirely unwilling!」
無理強いはしたくないな。
「ええっと、明日の僕のお世話係だからって無理しないでねケイさん」
「多分おそらくsleeping!」「うん僕も、みんなもね」「わかったわリョーちゃん」「ええ涼一」
さて、夕食が終わったら……
「始めに言っておくけど、お風呂は放っておいてね」
釘刺さないと、昨日みたいに、
まーたなんだかんだ来ちゃいそうだ。




