第120話 やっぱりイトコって知られているらしい
「うおーい遠藤涼一くん」
「どうしたの後藤航希くん」
クラスのイケメンきたきた。
「噂によると隣の小泉景香ちゃんと」「イトコだね」
「世話して貰ってるってマジ?!」「マジマジ、幼馴染だから」
「どんな世話を」「僕って母さん、僕を産んだと同時に死んだからさ、その双子の姉の娘である景香お姉ちゃんが……」
とまあ、この前置きをすると、
大概は『肉親で母親代わり』と察してくれる、
そうなると逆に、同情を引く訳じゃないが嫉妬みたいなものが薄れてくれる。
(ある意味、便利に使わせて貰っている、実際は婚約者だけどね)
このあたりは逆に僕の事を聞かれたときに、
景香お姉ちゃんも言っているらしい、沢山居る実の弟の1人みたいなもので、
もうすでに家族であり恋愛対象には成りえないでしょ、みたいな印象を与える。
(ただ、そうなると次は……)
航希くんも頷きながら話を聞き終えた。
「わかった、大変だったんだな、それでだ、彼女ってどういう男が好きなんだ?」
「大農園の娘だから、朝、夜が明ける前に畑や田んぼ、果樹園の様子を観に行って、
昼は午前も午後も農作業、雨降ってもビニールハウスで作業、夜は家畜の世話と……」
婿に入っただけで無償のブラック企業、
みたいな話を延々するとやっぱり引く引く、
実際に小4まで手伝わされたのでその状況も加えて。
(甘めに手伝わされてアレだったからなあ)
現にあそこの兄弟みんなムッキムキだ。
「た、大変なんだな」
「だから恋人にでもなったら休みのたびに栃木から、親が軽トラで拉致りに来るよ」
「それはちょっと」「僕は小4で逃げたから、まあ今は隣の住民としては丁度良い距離だけど、実の姉としか思えないからなあ」
と恋愛感情までは無いアピール、実際は別ににしてね、
でもここまで言って喰いついてくるのは、よっぽど本気かそれとも……
「でもこっちに来ている間の、息抜きの相手くらいは俺でも」
「どうだろう、バイトに部活のヘルプに忙しいっていうか、それでも空いてる時間はクラスの女友達と遊んでるね」
「そこに俺も」「ケーキ奢らされるよ、まあ後は本人に聞いて、って細かい姉ちゃんのスケジュールまでは知らない」
なんだか肩すかしって感じだな、
まあ僕なんか使うより本人に直接っていうのは、
一般論としては当然だし、って欲しい情報は与えたぞイトコとして。
「そうか、でも強い男が好きって感じか?」
「んー、聞いた事ないけど少なくとも何かあったらムッキムキの兄たちが栃木からとんできそう、
特に近い兄はヤベエから、田舎だから許されるけど東京だったら少年院に住民票を移すレベルかな」
いや田舎でもアレは許しちゃいけない、
アイツは……しかも妹の景香お姉ちゃんにべったり甘えていたという、
姉ちゃんが引っ越してきてもうすぐ1カ月だけど、小泉家はいまどうなってるんだろ?
(知ったことか、ではあるんだけどね)
そういや軽トラでまた野菜届けに来るらしい。
「わ、わかった、でも遠藤の家に遊びに行けば、会えたりは」
「あくまで親戚としてたまに様子は見に来るね、僕からは行かないけど」
だって景香お姉ちゃんの部屋に入って、
2人っきりになったら何されるかわからないもの。
「そ、そうか」「ていうかウチ来ても勉強するだけだし、ねえ」
と一緒に聞いていた友達三人に振ってみる。
「ああ、小泉さんちょっと顔出ししてくれただけだったな」
「部活の助っ人で忙しいっていうのは一緒に聞いてた、でも良い匂いだった」
「それより涼一の家のお手伝いさんのがヤベエよな」「あれはお金で雇われているだけだから」
そう、雇われメイドである、婚約者だけど。
「わ、わかった、当たって砕けてみるよ」
「僕自身、姉ちゃんにそういう興味も無かったし、そこまで会話してる仲じゃないから、なんかごめん」
「いやいや、でも上手く行ったら恋人の従弟になるんだよな?」「まあ頑張って、骨は拾ってあげるよ」
振られるってわかってると、
ちょっと可哀想に見えてくるな、
でもこれで3年後、僕が景香お姉ねえちゃんを選んだら……
『騙されたー!!』
ってなるな、
いやまあ現時点ではまだわかんないし。
後藤くんが席に戻ったのち、友人に聞いてみる。
「ていうか景香お姉ちゃんってそんなに魅力的?」
「隣のクラスのヒロインだぜ」「従姉だと、そうなっちゃうかあ」
「正直に言って、涼一の部屋で会った時、ドキドキした」「そんなにかあ」
……もし景香お姉ちゃんが突然、
『涼一ごめんね、彼氏が出来ちゃった』
とか言われたら、
それも一応、寝取られになるのだろうか?
一度改めて、好きな男性のタイプを聞いてみるか。
(あくまで雑談としてね!)
ただそうなると、
僕の好きなタイプの女性も聞かれそう、
うーん、改めて考えると……出てこないな。
「そういえば涼一、今日の放課後はどっか行くのか?」
「ええっと、ウチのメイド長とデート」「「「デート?!?!?!」」」
「いやその、前々から行きたいって言ってた映像ミュージアムに付き合わされるだけだから!!」
凪さんのこと知ってるだけあって、
羨望の眼差しで見られているような気がする……。




