第118話 今夜は家庭教師モードらしい
「テストの範囲内から少し外れるけど、ここは……」
「ふむふむ」「それで、これがこっちと繋がって……」
「なるほどなるほど」「あと、こっちのこれをこうすると……」「はいはい」
まだ外で雨が降る中、僕の部屋で、
夕食後の凪さんに勉強を見て貰っている、
メイドでもゴスロリでも地雷系でもなく、家庭教師モードの服、眼鏡。
(先日、友達と一緒に勉強を教えてくれた時と違う服だ)
凪さんによると複数人相手の塾講師モードと、
気のある生徒への家庭教師プライベートレッスンモードで、
服装を変えたらしいのだが、正直言ってあまりよくわかりません!
(沢山、いっぱい服を買えるくらい金銭的余裕があるのはわかった)
でもなあ、月給倍で引き抜きかあ、
正直に言うと凪さんなら、もっと大きいお屋敷のメイドも出来るだろう、
いやあの葉巻のおっさんだかじじいだかが、どういうメイドを望んでいるかもあるが。
「……涼一くん? わかってる??」
「あっはい、そこはまあ、大丈夫かと」
「一応は復習するわよ」「じゃあ解きますね、用意して貰いましたし」
凪さんの教え方は本当に良い、
色んな意味で頭が良い、そんな才女、
これ、どんな坊ちゃんのお世話係でも完璧に出来そう。
(だからこそ、ここへ来た本当の経緯を聞くべきか……)
僕の知っている情報を整理すると、
婚約者に対し凪さんが酷い裏切りをして解消、
そして全身に酷い火傷の痕があって、普段は長袖や足首まで隠す長スカートとかストッキングで隠している。
(その身体を見て僕が平気かっていうのが、最大のネックなんだろうなぁ)
ただ婚約者でなく女社長としてもおそらく超有能、
そういう意味では父さんにとって欠かせないパートナー、
更にそのうえで僕の婚約者になってくれて、しかも口説いてまでくれている。
(いや、包み込んでくれているとでも言おうか)
良い匂いだよなー、
凄く美人だし、そのうえであんな様々なコスプレ?
これ、より親密になったらいったいどこまで行くんだろう。
「……はい田中先生、出来ました」
「じゃあチェックするわね……ふむふむ……」
24歳かあ、結婚出来る時は27歳に、
なんだろう、思いっきり尻に敷かれる気がする、
結婚したとたん急に厳しくなったりして、そのあたり見極めるべきかな。
(裏切った彼氏と、喧嘩とかあったのかもだし)
何かで聞いたことがある、
女性は結婚するまではサービス期間なんだって……
それが終わって彼氏が怒って、喧嘩になってとか? じゃあ裏切りって……
「あっ、どうでした?」
「全問正解よ、えらいわ」
「そんな頭を撫でなくても」「じゃあご褒美は何が良い?」
いやご褒美って!
「いや、凪さんに勉強を教えて貰っているだけで、十分ご褒美ですよ」
「じゃあ後ろから抱きしめてあげる」「いやそんな」「後ろからよ、ハグよハグ」
「軽くですか」「単なるご褒美だから」「その、緊張しちゃいます」「これから毎回するわよ?」
僕の後ろにまわって、
そっと腕を絡ませて抱きついてきた、
こ、これは、添い寝なんかよりも、もっととんでもなく……!!
コンコンッ
「ココアを持って来たわ」
「あっ陽菜ちゃん、あ、ありがとう」
「料理係ですもの今日の、あんまり根を詰めないようにね」
ふう、助かったかも知れない。
「ありがとう丸瀬さん」
「凪っち、どういたしまして!」
「それにしても、なんていうか」「リョーちゃん、タイミング良かったでしょ」「ま、まあ」
あっ、ドアの隙間から見てたとか?!
もしくは耳をずっとあてていたとか、
でもその割にはココアが淹れたてな感じ。
「ちゃんと歯を磨いて寝るのよ?」
「わかってます」「あと私も背中から抱きついてあげられるわよ」
「ええっと……オポッサム?」「私みたいなのが4人とか5人とか居たら困るでしょ」
というか怖い。
「ちなみに今日の添い寝は」
「私と橋本っちゃんよ、だから脚立無しで背中にしがみつけるわ」
「いやそんな」「何か問題でも?」「体温高そう」「赤ちゃんじゃないわよっ!」
結局、残りの時間は陽菜ちゃん監視の下で勉強を教わりました。
(あくまでもアシスタントらしいです!)
ちなみに添い寝は陽菜ちゃんに手を繋いで貰いました。
さて、明日は学校終りで凪さんと映像ミュージアムだっけ、
今度はどんな服を着てくるのか……いや、『普通で』ってお願いしようかな無難に。




