裏6人目 小泉景香(16)の決意 実家の農園支援の約束、私はお嫁に行きます!
「突然だが、景香を嫁に出す事になった」
「「「「「「えええぇぇぇーーー?!?!?!」」」」」」
栃木の大農園、
その大きな屋敷で私の兄弟6人が驚きの声をあげる、
そう、これを知っているのは家族では両親と私だけだった。
「父さん、初めて聞くんだけど」
「長男の恵一にも黙ってて悪かった、先方との約束だ」
「そうよ、中学卒業して、3月30日になって景香の気持ちが変わらなかったらって」
そう言った母さんも、
私を見てやさしい笑みで頷いてくれている。
「それで相手はどこの誰なんだ」
「啓治、最近は来てないがお前も知っている相手だ」
「最近来てないって父さん、それって」「ああ、母さんの双子、亡くなった妹・由紀のひとり息子だ」
そう、名前は遠藤涼一くん、
ううん、涼一って呼んでいたわね、
ここへ遊びに来ていた小学4年生の夏までは。
「あの弱いアイツがか?! とてもうちの農園向きじゃなかった」
「桂実、まあお前くらい筋肉がある男なら婿に欲しいが、嫁に出すんだ、関係ない」
「それでもウチに何ももたらしそうにないぞ?!」「慶士、今まで言っていなかったが、我が農場は一度、潰れかけた」
そう、もう10年以上前の話らしいわ。
「それが、何の関係が」「京吾、その時に遠藤さんに多大な支援を頂いた、金銭面だけじゃない、
農場の拡張や技術面、販売ルート、様々な面でお世話になった、すなわちこの農場があるは遠藤さんのおかげだ、
いわば命の恩人だ、そして今現在もその総合商社の東京支店から支援を受け続けている、それが無ければもうすでに、4・5回は潰れていた」
私は詳しい話は中学校に入ってから知った、
それまでは『仲の良い弟だと思って接してあげて』としか聞いてなかった、
事情を知って私は、なぜだか嫌な気持ちにはならなかった、むしろ……ここから逃げられる、と。
「つまり父さんは、姉ちゃんを売ったんだ」
「螢夢、最終判断は景香だ、その本人が良いと言っている」
「そうよ、それに行ってみて、高校生活3年間で嫌になったら、いつでもこっちへ戻って良いって話なの」
母はそう言うが戻りたくは無い、
正直言って、大農園の女性は極端に言うと、
縁の下の力持ちを一手に引き受けないといけない。
(そっちの方が、地味に辛かった)
だからこそ涼一くんが、
ううん、涼一が遊びに来た時は、
そっちのお世話がメインになるから本当に楽で良かった。
(でも小4の夏で、なぜか逃げられちゃったのよね)
おそらく理由は想像がつく、
農園の仕事が物凄く大変だから、
最後は泥まみれになって夏休み途中で逃げちゃった。
「私は、涼一くんのお嫁になってこれからも農園の支援を続けて貰うようにするわ、
これでお金の面は心配ないようにする、だからみんな、こっちは頑張ってね、特に真奈さん」
「はい」「恵一兄さんのお嫁さんに、私の分の仕事を押し付けるみたいでごめんなさい」「いいのよ、中学生なのによくやってくれてたわ」
それどころか小1から私は家の手伝いをさせられている、
いやその年頃でやれる仕事はたかが知れていたのだけれども、
小4の夏あたり、丁度、涼一くんが逃げたあたりから私への仕事の負担が一気に増えた。
(仕事というより、兄弟の世話ね)
長男次男は母さんが、
三男から六男までは私が世話をしていた、
それと同時にもちろん、農園の仕事も……だから今日、逃げ出せてせいせいする。
「そんな訳で純菜さん、6月の啓治兄さんとの結婚式、行けるかどうかわかりません」
「大丈夫よ、私もここで景香ちゃんの仕事を引き継ぐわ、中学生に出来たんだもの、大人の私に任せて頂戴」
「ありがとうございます、その、私がその気でも、3年かけて、涼一くんをその気にさせないといけないので」
私の両肩を掴む父さん。
「すまない、我が農場はいまだ遠藤さんのつてで、援助がないと回していけない、
くれぐれもしっかりと、涼一くんの嫁になってきてくれ、駄目でも最悪、怒らせなければ良い」
「大丈夫よ父さん、ここへ来てくれていた間は、涼一くんに悪い印象はひとつもなかったもの」「逃げちゃったのは悪い事しちゃったわね」
母さんの言う通り、
ちょっと手伝わせただけだったのに……
でもいいの、もう涼一くんがわざわざそんなことをする必要は無いから。
(そして、私ももう、手伝う事は……無いようにしなくっちゃ)
父さんが改めてみんなに話す。
「という訳でこれは遠藤さんとの、農園支援の最初からの約束だ、
もし反対する者、邪魔する者がいたらここから追い出す、いや、絶対に許さん!
出て行かないなら土蔵に一生閉じ込めてやる、それくらいの決定だ、異論は無いな?」「景香、元気でね」「うん母さん、私、幸せになってくる!」
この時、私は、
後ろめたい気持ちがあったのか、
その日まで世話をしていた兄である三男と、弟の四男~六男の顔を見る事が出来なかった。
(ごめんねみんな、急に居なくなって……でも、今日まで秘密にする約束だったから)
こうして私・小泉景香は、
胸に期待を抱いて上京したのだった。
回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回
……と、やってきてもう半月が経過したけど、
まさか年上のライバルが5人も、しかもどれも反則級!
でも大丈夫よ、相手は25歳~21歳、年齢の近さでは一番有利だわ。
(何より私は、幼馴染という絶対的優位がある)
再会した時は本当に嬉しかった、
何より私は実家で鍛えられた『面倒見の良さ』がある、
2つ年上の三男・桂実兄さんの面倒も見ていたくらいに!
(あれは気性がね、もう会いたくない、正直言って)
それはともかく、
目の前の婚約者だわ。
「ねえ涼一、今日の晩御飯作るのに混ざれなくてごめんね」
「ううん良いよ景香姉ちゃん、昨日の夕食、普通に美味しかったし」
「土曜日は私の当番だものね」「高校1年であれは大したもんだよ」
そりゃあ実家で鍛えられましたもの!!
「明日は私よ」「うん、凪さんありがとう」
「その次は私デース」「ケイさん、英語風挟むの本当に好きだね」
「この私、お姉さんも結構やるでしょ?」「水曜日は陽菜ちゃんだよね、脚立に乗って作ってくれて」
ライバルのお姉様方も必死ね、
それに答える涼一くん、ううん、私の涼一。
「私は~、お料理配信で鍛えた腕前を~」「れいさんのも美味しいけど甘い味付け多いよね、嫌じゃないけど」
「ふふっ、逆に私は大人の味付けを心がけているわ」「もちろん、えみとさんの料理もしっかりしていて美味しいよ」
「ねえ涼一、私、3年かけて涼一の好みの料理、一生懸命マスターするから」「うん、景香お姉ちゃん、ありがとう!」
こうして食卓でさえ涼一くんの争奪戦は始まっている、
もちろん『最初に決められたルール』は絶対に守る約束、
そのうえで、私は幼馴染アドバンテージを最大限に生かせたい。
(そう、会わなかった、会えなかった『空白の6年間』を埋められる程に……)
私、絶対に、必ず涼一くんの、涼一のお嫁になりますっ!!!
次から本編です、頑張って執筆させて頂きますので、
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