第94話 素早いメイドらしい
「ふふ、若、さあ行きましょ」「若って!」
「涼一って若だったの?!」「初めて知った」「少し遅れたので急ぎましょう」
「そうね涼一、志保とひろみが待ってるわ」「いや景香お姉ちゃんがゼロで遊んでて遅れたんじゃ」
という水曜朝の登校風景、
僕の事を『若』と呼んだのはメイド姿のえみとさん、
スタスタと前を早歩き、いやメイド服で素早いこと、油断すると置いていかれる。
「前から車よ、若、お気をつけて」
「あっはい、ていうかメイド服でそんなに歩いて汗かきませんか」
「着替えてきたから」「えっ」「ふふ、この恰好で早朝、工場まで」「何してるんですか」
メイド服で早朝ジョギングとか!
「だから橋本さん、涼一や私を起こした時メイド服だったんだ」
「メイド服で工場に入って、軽く備品交換して戻って、起こしたあと軽くシャワーを浴びたわ」
「その後、またメイド服を」「ええ予備のね、これがその2着目、だから大丈夫よ、ふふふっ」
汗臭くないってことか、
中はどうなっているんだろう、
とか思ったら前から今度は自転車のお爺さんが……って、えっ?!
(えみとさんが、さらりと躱した!!)
あの爺さんの動き、
変だったな、特に腕が。
「ふふふ、素早く避けたわ」
「もう、涼一、あのお爺さん、石投げていい?」
「えっ景香お姉ちゃん、えみとさん、何があったんですか?」
爺さんはもう居ない。
「ふふ、よくあることよ、お尻を触られそうになったわ」
「あぁ、すれ違いざまに!」「橋本さん、華麗にスルーしてたわね」
「自転車が倒れそうになってたわね、ふふ」「えみとさんなら逆に助けそうですが」
でも、その助けている間に触られそう。
「工場でも昔はままあったわ」「そうなんですか」
「ええ、女子高生の頃とか、セーラー服で蛍光灯交換してる時に」
「それは逃げ場が無い」「人手不足だと、あまり文句が言え、若、お友達よ」
本間さん石原さんが、
そわそわして待っていた。
「んも~、遅いよー」
「早く早く、遅刻しちゃう~」
「志保、ひろみ、ごめんね」「お、おはよう」
今度はえみとさん、
前では無く僕の横へ……
先導ではなく従者モードっぽい。
「涼一くん、昨日はありがとうね」
「あっはい、ケーキ美味しかったですよね」
「いいなー、私もご馳走して貰えるんでしょ?」「まあ石原さんにも、1度は」
って次回、
友達が5人くらい増えてたらどうしよう、
いやなに同学年でハーレム作ろうとしているんだ僕は、って妄想が過ぎるか。
(スポーツ女子ハーレムかぁ)
色々と体力使いそう。
「景香、昨日のゼロちゃんは?」
「あー置いてきちゃったっていうかアレ、実は涼一の」
「ウチのメイドに、お手伝いさんに遊んで貰っただけです、あっ、このえみとさんとは違いますが」
……えみとさんのお尻が狙われたように、
きっと、れいさんのお胸はもっと狙われるんだろうな、
そういう意味でもリモート従者は良い手だと思うけれども……
(卒業間際になったら、1度くらいは一緒に、登校に付き合って欲しいカモ、生身で)
ってみんなして早足です。
「遠藤くん、今日は駄目?」
「ごめんなさい石原さん、クラスの友達と勉強会が」
「涼一、あのケーキ屋でやったら?」「いやいや、ついてきて隣でケーキ食べる気でしょ」
僕の奢りで!!
「でも涼一、男子だけでケーキ食べに行くとか、悪くないと思うわよ」
「だったらファミレスかなあ、あ、奢らないよっ!」「遠藤くん、お小遣いどのくらい貰ってるの」
「本間さん、それは秘密かな」「メイドさん従えているくらいだものね」「石原さん、まあそこは、そこそこ」
スマホで通帳見せたら気絶しそうだ。
「若、着きました」
「はっや! ていうか汗だくだぁ」
「涼一、拭いてあげる」「あ、ありがとう」
景香お姉ちゃんがカバンからタオルを出して、
僕の首筋を……ってシャツめくって背中まで!!
「ほら、お腹も」「姉ちゃん、もういいから」
「景香と遠藤くんって、ほんっと姉弟ね」「仲良いねっ」
「え、えみとさん」「それでは私はこれで、若、御勉学がんばって下さいね、ふふ」
そう言い残し、
あっという間に去って行った……
(ハンター試験で先導できそうだな)
元ネタがわからない人は、ごめんなさい。
「涼一クン!」
「えっ?! あ、古雷さん!」
「昨日はありがとー!!」「うわ、抱きつかないでっ!」
スポーツ系女子は、
こういうのがあるんだった……。
(て、わざわざ待っててくれたのかな)
うう、周囲の目が、恥ずかしい。




