第82話 レストラン風のディナーらしい
「では涼一坊ちゃん、我々専属メイドが心を込めて作ったフルコースをお召し上がりください」
「あっはい凪さん、わざわざ僕のために」「仕事ですから」「なんかそう言われると、ちょっと寂しい」
「婚約者ですから」「あっ、ちょっと暖かくなった、心が」「それでは愛情たっぷりの料理を、まずはアミューズから」
という夕食のダイニング、
わざわざエプロンまでつけられて、
メイド服のみんなにこれから一皿ずつ出されるみたい。
(まずは、景香お姉ちゃんからか)
出てきたのは……栃木といえばこれ、そう、餃子だ。
「はい涼一、さま、私の得意な餃子、まずは3個ね」
「まずって」「おかわりはいっぱいあるわよ、いくらでも」
「全部でいくつ作ったの」「んー50個?」「多い多い」「余りはみんなで食べるわよ」
あっそうか、今は僕だけの夕食、
それが終わったらようやくみんなのか、
なんだか悪いな、そしてちょっと寂しい、は贅沢か。
(凪さんはお水を注いでくれる)
とりあえず食べ、あっつ!
ていうか小泉家の味だわコレ、
留美伯母さん直伝だな、そして相変わらずポン酢で食べる。
「うん懐かしい」
「遠慮なく食べてね」
「小泉家の奪い合いを思い出すよ」「涼一の分は別にしてたわね」
それでも何個か盗られたけど!
「美味しかった」「追加は?」
「んー、この後いっぱい控えてるんでしょ」
「食べたくなったらいつでも言ってね」「うん、ありがとう」
次に皿を持って来たのは、えみとさんだ。
「ふふ、オードブルは11種類の野菜サラダよ」
「豪華ですね」「小泉さんのおかげよ」「あっ、農園の野菜」
「もちろん下で買ったのもあるけれども」「フレンチドレッシングかな、いただきます」
11種類、トマトにブロッコリーに人参にパプリカかな、
レタスに玉ねぎにカボチャにコーンに枝豆にきゅうりに、
あと1種類はなんだろ、どれだろ、えっと、ええっとぉ……
「あっ、ひょっとして、パプリカとピーマンが混じってる?!」
「ええ、よく気が付いたわね」「それで11種類かあ、うん、美味しい」
「涼一坊ちゃま、パプリカもピーマンもナス科トウガラシ属ですが違う品種ですよ」
というメイド長の博学が出たが、
何気にドレッシングが美味しいな、
手が込んだ自作みたいだ、でも詳細を聞くのが惜しいくらいサラダに集中する。
「……もう食べきっちゃった、ありがとう」
「HEY! リョーイチ、次はMEのスープdeath!」
「あっケイさん、副メイド長に着替えたんだ」「服ダケにネー!」
ランチと買い物の時は普通のお洋服でした、
いや、例の英単語Tシャツとかでも無くって。
……中はあの高級下着なんだろうか、いや一度洗うか。
「これは匂いでわかる」
「Clam chowder デスネー」
「うん、クラムチャウダーの良い匂い」「中はgorgeousデース」
見ると、うん、貝がでけえ、
これホタテだよ、普通はアサリとかだっけ、
大粒で、これだけで豪華なのがよくわかる、凄いの作ったな。
「いただきま……うん、クリーミィ」
「濃厚に仕上げマシター!」「美味しいよ」
「bravoデスカ?」「うん、ボウルだからボリュームもあるし、最高」
ていうか下手したら、
もうこの時点でお腹いっぱいでも、おかしくない。
「次は私になります」「おっメイド長自ら!」
「ペスカトーレパスタです、具はサーモンとイカとエビ、それとアサリですね」
「なるほど、こっちに使ったんですか、トマトソースも良い匂い、いただきまぁす」
うん、美味しい、
ていうかコレ一皿で終わる夕食も普通にあると思うんだけど!
美味しくって、あっという間に平らげちゃった、量がちょっと控えめだったからね。
(って、この後にメイン料理が……???)
やってきたのは、
香ばしい肉の匂いがした皿を掲げた陽菜ちゃんだ。
「はいリョーちゃんメインディッシュ、ベーコンステーキよ」
「うわお、肉厚で大きいですね」「塩コショウと仕上げはレモンをどうぞ!」
「坊ちゃま、ライスも用意してあります」「お茶碗じゃなく、わざわざ皿に! 雰囲気あるね」
ナイフとフォークで切っていただく、
いや油が凄いな、ジューシーで美味しい、
下手な牛ステーキより美味しいかも知れない。
「陽菜ちゃん美味しいよ、撫でてあげよう」
「あら、ありがと」「ていうか、さすがにこれでお腹いっぱいになっちゃう」
「えー、涼一、もっと餃子食べてよ」「じゃ、じゃああと2個だけ」「こら押し付けないの」
陽菜ちゃんが軽く叱ってくれた、
いやあ、どこのレストランだろうここ、
ていうくらい美味しいフルコースだったなあ。
「ふう、ごちそうさま」
「では~、最後にデザートですぅ~」
「あっ、れいさん、大くんを煮た飴とか?」「あれは~、煮ても焼いても喰えませんよ~」
持って来たのは、
青いプルプルしたゼリーだけど、
目がついている、ってこれは、このキャラはー!
「あれだ、深夜アニメの、転生もののスライム!」
「目はグミで出来ています~」「わざわざ自作ですか」
「単なるゼリーですから~、そんなに難しくは無いですよ~」
凪さんは濃い目の紅茶をティーカップに注いでくれる。
「じゃあ、いただきまぁす、うん、おいちい!」
一瞬、幼児化してしまう程のテッパンな甘さだ、
いやほんと、これくらいのシンプルさと量で丁度良いのですよ、
しかも今、人気の深夜アニメキャラしかも主人公という、れいさんお見事!
(さすが声優を目指していただけはあるな)
僕なんかに落ち着くのがもったいない、
だなんて言うと失礼か、とにかくこれでフルコースは完了だ。
「……ご馳走様でした、ありがとう」
「それで涼一坊ちゃま、どの料理が一番でしたか」
「リョーイチ!」「リョーちゃん」「涼一さ~ん」「ふふ、涼一君」「涼一!」
うん、ここは……
「みんな、全員で1位です、チームの優勝ってことで!!」
もうこの後の、
みんなが食べ終わった食器を洗ってあげたいくらいだよ、
もちろん僕のも含めてね、いや料理を作るのは……やっぱ外食って楽だなあ。




