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4話

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「お団子うまー」




帝国?教会?魔王軍?

全く問題ない。

どうなろうと魔王の角の破壊に繋がるなら俺にとってウェルカムだ。見つかったなら見つかったで構わない。

隠れなくて良い事を悟った俺は直ぐに道を辿り、街を見つけた。




胸元に突き刺さっていた魔王の角は何故か深く沈み、今やその先だけがかろうじて皮膚から隆起している。

こうなってしまえば隠すには服で十分であり、ことさら何か準備する必要もなく街へ降りられた。

ここがどこだか知らないが、なにやらお祭り騒ぎの真っ最中とくればやることは一つ。

酒と飯だ。




勇者一行を救う。人類の命運を担う大仕事をこなしたばかりである。晩酌のひとつやふたつ、遠慮する必要など微塵もなかった。



眩しい日差しが顔を差す。

いい天気だ。




大通りは特に賑わい、多くの露店が並んでいる。

気になった料理を少しずつ買い食いしながら、乾いた喉に適当な酒を流し込む。




楽しい。楽しいに決まっている。

道ゆく冒険者。通り過ぎる馬車。忙しなく動く露天の人々。

肴には困らない。



しかし酔いが回れば座る場所が欲しくなるのも道理。

自分の足が赴くまま、やがて目に付いた店に入った。





「おっちゃんお酒となんか食いもんお任せで!」





「はいよー」





お一人様故空いた席に流れるように着席。

お任せで料理とお酒を頼み、1人で今回の旅の戦利品を振り返った。



仕事を終えた後行う恒例行事だ。

最後に使った魔王の角以外にも色々ある。




アイテムBOXの中身で旅の思い出を振り返ると、中々にセンチメンタルな気分になれる。

自分に酔えるのだ。



結局死んでしまうのであれば、せめて散り際くらい美しくありたい。

そんな想いがいつしかこの仕事で唯一と言って良いこだわりとなっていた。




標的と培った思い出を振り返ると、俺の最期にあった意味を感じることが出来る。

酔っている。そうとしか言えない独りよがりな感情ではあったが、この振り返りは外せない。

俺にとって大切な作業だった。






「ふふふ」




ただ溢れる笑みと、じんわりと広がる満足感。

これだよ、これこそが最も大事な報酬なんだとしばらくその感情に浸っていた。






「まだ賑わってんなぁ」




「そりゃそうだろ魔王が死んだんだ。魔族との戦争も一区切りつくしめでたいだろ」




「でももう1ヶ月だぜ?そろそろ落ち着いても...」




「馬鹿オメェ商人は稼ぎ時だから早々終わらせねぇよ。向こう一年はこんな感じじゃないか?俺らもそれにあやかってさぁほら、もう一杯」



「はいはいかんぱーい...」




近くのお客の声が聞こえる。

なるほど1ヶ月後に蘇生したのか。

神様が急いだ割にはまぁまぁ時間が経っているな。




「ぷはぁーうめぇ!いやー茶色万歳!勇者のお供の故郷ってだけでこんなに良い思い出来るとはなぁ」



「こんな呑んだくれに酒飲ませる為に勇者様も金落としてくれたわけじゃなかろうよ」




「おいおい記念碑の日雇いも中々重労働なんだぜ?お前みたいな頭脳労働...?が出来るやつが羨ましいよ」




「動かない分俺らも普段は薄給さ。だから今回の臨時給料は中々助かった。爺さん連中が茶色は幸運の兆しだなんだって言うの、あながち間違いじゃ無いな」




隣の席の話を聞くだけで中々良い情報が入ってくる。

なるほど気付かなかったがここは俺の故郷。エゼ村らしい。




俺は必要な時必要な年齢でリポップする。

この村はその始まり。一番初めにこの世界とご対面した場所。


目標の人物とは幼くして共に育ち、俺もこの世界の常識を学んだ。

それ以来、故郷を聞かれたらここと答えている。アッシュ達にもそう伝えたからだろう。

故郷へ埋葬してくれたらしい。手間もかかったろうに。





それにしてもまた茶色かぁ。

偶には別の呼び名で呼ばれたいもんだが。

俺は茶髪で、行く先々で「茶髪の」「茶色の」そう呼ばれる。

それ以外特徴が無いからだろうな。


蘇生を繰り返す内、何かで広まったのか最近では茶色は吉兆の証...死の運命を遠ざける、だなんて言われているらしい。



むず痒い気持ちだがこれが結構役に立った。

目的の人物に近付きやすくなったからだ。

「彼は茶色だ。縁起がいいよ」アッシュもそう言ってたっけ。





(にしても記念碑...今の聴いてたらそれ以外にも相当ばら撒いてるみたいやな。アッシュめっちゃ金使ってんなぁ。自分の記念碑を好んで建てるようなやつじゃなかった筈やけど。ってか記念碑なんて似合う村じゃなかったのに...)



時間の流れを感じる。

俺が居たのはもう数百年も前の話だ。

あの頃は煉瓦仕立ての家ですら珍しかった。

随分辺鄙なところにあって交通の便も悪かったはず。


それが今はどうだ。

道は広く整備されて、外壁があり、栄えた大通りと人が住まないスラム、中心には城のような建物としっかりとした都市の様相を見せている。

ここまで発展しているとは。

もう村、なんて言い方は出来ないだろう。




「お待たせしました〜」




目の前にエールとソーセージが置かれる。

正に定番の組み合わせだ。オススメに相応しい。



思考を打ち切って舌鼓を打つ。

思わず顔が綻ぶ。こちらの味付けも遥かに進歩している。

そして相変わらずこの世界の肉は味付けが濃い。酒が進む進む。




次にすべきこともなく、何かに追われているわけでも無い時間は久しぶりだ。

今日はとりあえずゆっくりしようか。






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