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3話

「任務完了〜」




呟いて伸びをする。眼前には一面の白い空間。

地平線まで白く、地面があるのかすら曖昧なその光景に立つ人影1人。



彼。

長い口髭、高い身長。

白いモヤのように揺蕩う俺とは違い、確固たる輪郭を持つ老年の男性の姿があった。

彼の名乗りに従い、人神、又は神様と呼んでいる。




「いやー遂に勇者のお手伝いとはね。でも綺麗に締めたんちゃう?」




返事は無いが、構わず続ける。

もう長い付き合いになる彼は神ではあるが、協力者として気安い関係を築いているつもりだった。



「街単位で動けたから運命力は逆に楽やったね。リザルトはどう?ちょっとやり過ぎたかな」




そう、協力関係。

俺は神様の使徒として、世界の調整を行う別世界の魂。

元の世界ではとっくに死んだようなものであった俺であるが、この神様に見繕われその下で働いている。

動く体とボーナスタイムを与えてくれた神様へ労働で対価をお返ししているわけだ。




仕事の目標は超明確。

<<特定の人物の代わりに死ぬ事>>


本来大きな事を成し得たが、<死の運命>により一歩手前で死んでしまう人物の身代わりになる。

その為に必要な<運命力>を集め、来るべき時の為に近付き、いざその時に俺が死ぬ。



これを繰り返してきた。

死の運命、なんてものが何故存在するのか。その理由は神様曰く、昔敵対した別の神様がこの死の運命を世界中にばら撒いたからだと聞いた。

世界に大きな影響を与える人物に集まり易い傾向にあるらしく、まぁ迷惑なことである。



もちろん着の身着のままで元日本暮らし、引きこもりゲーマーの俺がそんな大役毎回達成するなんて不可能に近い。


ちゃんと御誂え向きな能力を頂いてある。

それは簡単に言えば...<ゲームのシステム>そのものだ。



俺は生前ハマっていたあるゲームのシステムを、俺自身に適用できる。

経験値取得によるレベルアップ。

レベルアップによるスキル、魔法の取得。

ジョブ選択、アイテムや武器防具の生成、ビルド構築による能力値の強化変更...等々。



これにより俺は完全にゲーム気分でこの仕事に取り組んでいた。

この能力は目標を助けるために使うのはもちろんだが、大半は運命力の獲得に用いる。

これも簡単な話で、身代わりになる人物にもそれなりの格...存在する力が必要だということだ。

一番効果的なのは「俺が居なければ死んでいた」人物を増やすこと。他にも色々手段はあるが、これが一番手っ取り早い。

要はその後の世界に俺の有無でどれだけの差が出るか、その部分が重要なのだ。




そうして方々手を尽くし、結末は俺の死で締めくくられる。それが俺の仕事。この世界でやってきた事だった。



楽な死に方ばかりじゃ無い。死ぬことが嫌になった時期もあった。しかし、俺はこの仕事が好きだった。

ただ暗い部屋でゲームをして、それだけでいいと思っていた俺に与えられた天啓。


俺がこのゲームに取り組む事で人の役に立つ。救われる命がある。守られる生活がある。

俺を前に向かせたのはその充足感だった。




故に仕事終わりはいつも上機嫌。

今回も例に漏れず。




そんな俺に、神様は少しのため息で応えた。




「お主...最後の最後でやらかしたのぅ」




「え、なんかやっちゃった?」




「やっちゃった、ではないわ。何故魔王の角なんて使うんじゃ。あんなばっちぃものワシの使徒が触るでないわ」




「いや、最期の演出にもってこいじゃんとか思って...」




「入れ替わった時点で運命は確定しておった。

手札も切らん内にあんなもの使いおってからに...面倒なことになったぞ」




「...もしかしてアッシュ達になんかあった?」




血の気がスッと引く。

いや、今は魂だけだから血なんか通っていないが。




「面倒な事になったのはお主じゃお主!魂にまで刺さっておるぞ」




指差されるまま胸元を見るとあらびっくり。

白いモヤモヤな体にバッチリ突き刺さった黒い角がよく映える。





「うわ、え?これどうなんの」




「魔王の一部を魂にまで取り込んだんじゃ。魔王となる条件は知っておるな?」




「確か魔界の地脈と繋がった者が魔界の王となる...いやいやだって俺死んでるし...」




「そう、お主は今正に魔界の地脈と繋がっておる。死後の今もな。お主が次の魔王じゃ」




「えぇ...?」




思わず声を漏らす。

魔王?俺が?

ずっと人類の味方してきたんだが。




「でも俺死んでるやんね」




「体はのぅ。だから面倒なんじゃ」




「な、なんで?」




「お主の死体が問題なんじゃ。お主の魂は既にここにありあちらは抜け殻...このままではお主の体の中で新たな魔王が生まれ、自我を得てしまう可能性がある。争いのタネじゃな」




「魂の俺とは別に?そんなドッペルゲンガーみたいな...」




「そして肉体は都度作り直しておるが、今回は魂に刺さっておるからの。死体だけ処理しても魔界とのパスが繋がったままであれば次回も同じことの繰り返し。毎回死体の処理まで手を加えると他の神に気付かれるかもしれんし解決にはならん」





「あー...めんどいことしちゃったのは理解したわ。んでどうする?このままやと俺のそっくりさんで魔王爆誕するんやんね」





「そうなる前に魂のお主をあの体に戻す。そうなれば使うのはお主じゃ。問題なかろ」




「お、てことは今回はすぐ復活か」





これまでは必要な時に必要な場所で復活していたから活動時期に結構な開きがある。

最近は短いこともあったが、それでも最短で数年。



即座に復活というのは例がない。





「体なんか変わったりする?その...闇の力、みたいなんで」





「わしが変えさせんわ。その角は破壊してくれる人物を探してどうにかせい。差し当たり勇者なら可能じゃろうが、他にも心当たりはあるじゃろうて」




「まぁ心当たりはあるけど今どこにおるかとかは...んー時間かかるかも。俺のお仕事の方は大丈夫?」




「お主の働きで世界も随分安定しての。運命の回収もほぼほぼ済んだ。そろそろ暇をくれてやろうかと思っていたところだったんじゃ。ちと想定外ではあるが、ゆっくりしてくれば良い。また連絡はするでの」




「えー...んまぁ了解」




言うなり視界が暗くなる。

この空間からあちらの世界に送られる時の現象だ。

本来いくつかの打ち合わせがあって送られるが、今回は随分性急に感じる。本当に早く俺を戻さないと不味い事になると見た。




次に瞬きをした時には体に触れる布の感触があり、寝起きの様に鈍感な体の感覚が戻るのをそのまま待った。





俺はこの仕事が好きだ。

休暇を貰えると言われても、やりたい事は当然仕事だ。困ったな。

休みをくれると言うのなら死ぬことを急いだりはしないが....



だが、恐らく胸のこれ壊して貰ったら俺そのまま死ぬんじゃないか?

神様の言う通り心当たりはいくつかあるが、破壊を頼んだ知り合いの目の前で死んでしまうのはちょっと気が引ける。

お仕事に復帰する為には仕方ないので何か考えようとは思っているが...一番早いのはと聞かれればやはりアッシュに切ってもらうことだろうか。




少し瞳を閉じながら考える。

アッシュ達が俺の死体を回収できていたなら俺は棺の中だろう。

生き埋めではあるが特に問題はない。

もはや体に戻るという早急の目的は達しており、焦らなくても良いと思った故の余裕だった。




しかし、少しずつ体の感覚が戻るにつれ違和感に気付く。



揺れている。

これは....馬車?



違和感が確信に変わり、俺は即座に魔法を放った。

風の範囲魔法。周囲に人や何か仕掛けがあればまとめて吹き飛ばせる。




パァンという木製の破砕音と共に視界がクリアになる。

馬車は大破して止まり、夜ではあるが月明かりに照らされて人が1、2...3人?


どれも擦れた服に欠けた歯と如何にも墓暴きな服装だった。

驚いてこちらを見ている。




「....」



予想していた物騒な顔触れではなく、殺す必要も無いだろうと判断した。

十中八九俺に金目のモノが無いか見に来た墓暴きの浮浪者。

今回は勇者のお供というネームバリューがあった。この様なことがあっても不思議では無い。




<ジャンプ>

<空中ダッシュ>



その場から即座に離脱する。

なんにせよ人目を避けなければ。一度死んだ人間が蘇るなんて、面倒事を呼びかねない。



教会やら帝国やら、その辺の神がかった奇跡の収奪に積極的だ。

魔王の角の破壊方法もなにか変な方法を見つけてきて、下手すりゃ殺されて解剖....あれ?





はたと気付き、歩を止めた。





別に見つかってもいいんじゃね?







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