2話
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「.....」
最初は、声にならなかった。
駆け寄り、次の瞬間、足を止める。
「嘘……」
間違えようが無かった。
見慣れた服、見慣れた杖...先程まで、歩幅を並べた仲間の顔を...間違えるはずが無かった。
「...下がって良いって言ったじゃない...」
漏れるように声が出た。
それはこの現実を受け入れたく無いが為の、誰に届くわけもない<こうすればよかった>
既に終わった事象にそんなもの無意味と分かっているのに。
全てが終わり、私たちは仲間の元へ急いだ。
ケイ。誰よりも人助けに熱心な、あの茶髪の少年のところへ。
この様な場面は何度かあった。
その度に彼はひょっこり現れて、こう言う。
「終わった?サボらしてもろて悪いね」
彼の元に向かうけど、姿が見えなくて。
みんなの不安が高まるその瞬間に決まってあのセリフを。
変に隠れる位置を探すのが上手いんだから、といつも思っていた。
だが今日は...簡単に、見つけられてしまった。
「ミア....」
ヴォルガルドが肩に触れる。
彼は騎士だ。戦場での経験もある。
いつもは助けられるその経験が、今は少し恨めしかった。
「ケイ...ケイィ..............」
横ではアッシュが嗚咽を漏らしている。
ケイの服を握り、両手をその血で濡らす事すら厭わずに。
魔王との戦いは嘘の様に上手くいった。
奇跡の連続だった。もはや運命がそうさせているかのように。
だから...そう、私達は期待していたのだ。
全て上手くいく。
誰も死なずに、帰れるって。
「言ったじゃない....」
周囲には数え切れないほどの魔族の死体がある。
周囲の地形の変化も。そして、彼の体に付いた傷も。数え切れない。
どれだけ壮絶な最期だったか、一目で....
「私たちが居るんだからねって...っ!!」
痛かった筈だ。苦しかった筈だ。
なのに、穏やかな死に顔だった。
笑みにすら見えた。
やり遂げた...顔だった。
分かっている。
ここに誰が残ったとしてもこうなる未来だったって事は。
だからケイは自分が残った。
あの時、彼はここを死場所に決めたのだ。
ケイならそうはならないんじゃないか。私達の甘い、ただただ甘いその期待さえ見通して。
だからこそ悔しかった。
負けず嫌いで打ち解けなかった私を、勇者一行の魔法使いとして馴染ませたのは彼だ。
彼は何度もそう言った。私が信じるまで何度も何度も。
「仲間じゃないの?そう言ったの貴方じゃない。なんで....頼ってくれなかったのよ...」
信じて欲しかった。
失いたくなかった。
彼をそうさせた自分の力不足がどうしようもなく不甲斐なくて。
悲しくて、辛くて、信じたくなくて。胸の奥から溢れたのは、涙と彼が2度と戻らない現実。
泣き声が響く。
彼の体はもう、冷たかった。
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