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1話

ーーーーーーーーーーーーーーー





「先に行け!」




「ダメよ!!アッシュを置いていくなんて!!」




「早まるな!アシュレイ!!!」




「みんなで生きて帰るためだ!ここは一旦...」





ドサっと人が倒れる。

今まさに仲間を逃さんと殿をかって出た金髪の少年だ。



原因は完全ノーマークだった首元への一撃による失神。

犯人は俺だ。




「なっ...ケイ!?」




「その通り。アッシュ置いてくとかねーよなぁ」





彼を抱えて、騎士の大男...ヴォドさんへ投げ渡す。

先程早まるな、と叫んだ男だ。


俺の行動に一瞬面食らったようだったが、視線を合わすと直ぐに目を伏せた。

意図は伝わったな。




「勇者が道中で脱退とか無いっしょ。ここは脇役にお任せあれだよ」





彼には既に伝わっている。

これはその横にいる少女...魔法使いのミアへの言葉だ。




「な、バカなこと言わないで!誰も置いて行かないって言ってんの!!」




「そんな顔せんでよ。負け戦みたいじゃん?アレ、どうにかせんとやろ」





指を刺す。長く長く登ってきた通路の下からは、数えきれないほどの魔物が押し寄せてきている。

その速度は俺たちより早く、追いつかれるのは時間の問題だった。





「大丈夫。魔王さんと戦うのはちょっち大変そうやからさ。ここでサボらして貰お思ってね」




「...っ」




ウインクをかます。




「俺が追いつくまでには終わらせといてや?知っての通りめんどくさがりやからさ」




そう言って木製のスタッフを取り出した。

唱えた魔術で先陣の魔族達が消し飛ぶが焼石に水だ。

ため息を吐く。

安心させるのは失敗したかもな。





「...わかったわ。でも必ず追いついて来なさい。下がっていいの。私たちが居るんだからね!!」






駆け抜けて行く彼女達を見送る。

良かった。魔王の所まではまだある。あのアッシュなら直ぐ目覚めるだろう。






「さーて、やるだけやってみるか...」





見栄は張ったが眼下の敵は凄まじい数だ。

残念ながらアレを一掃するような術は無い。


それでも、追いついて来いとのお達しだ。

最初から諦めるのは違うよな。





「人間がぁ!!どうやって紛れ込ん」




一番前の馬型魔族の頭を潰す。

即撃。直線の踏み込みで武器による突きを放つスキルだ。



続いて連撃。突きだけではなく縦横様々な方向から杖でぶん殴る近接戦魔法使いの基本スキル。

スキルの広域化ビルドで雑魚戦特化構成にしてある。威力は落ちるしノックバックも無くなるが、攻撃範囲の大幅な拡大効果がある。



故に一撃で葬れる相手であればかなりの範囲を掃討できる。

範囲魔法で一掃出来ない数相手に俺が取れる唯一の対抗手段だった。



他より足が早く抜けていた先陣を丸ごと経験値へ。

そして来たる本陣へ向け呼吸を整える。




(3...2....1......今!)



連撃1、連撃2、連撃3、即撃、百烈パンチ、テレポ、連撃1....




遂に押し寄せた魔族達の波をコンボで堰き止める。

魔族達の怒声と、俺の攻撃に当たって弾け飛んだ肉片達の音がドガガガガと周囲に響いた。




コンボを繰り返す繰り返す繰り返す....

一片のミスも許されぬ、圧縮された時の中にいるような時間。

今際の際だ。ミスなどしない。

だがコンボの繋ぎには必ず隙がある。

隙間を縫って通る攻撃は回復薬を差し込んで強引に受けることになる。

...受ける攻撃をミスして一撃で死ねばそこで終わりだ。




永遠にも思えるたった10分間。そこまで粘ってようやくこの雪崩に拮抗出来たと確信した。

でも、これで終わるなら苦労はしない。

そろそろ....来たな。





「ッ!!」





「チィ!!」





カァァン!!と特徴的な音が鳴る。

カウンタースキルが決まった音だ。鳩尾に俺のスタッフが直撃するが、しかし彼女は全く怯んだ様子はない。


魔物達の洪水から一条の光の様に突き抜けて来たそれは、今世の宿敵とでも言うべき人物。




「また貴様か!」




「よく会うねぇ!一回飯とかどうよ!!」




「ぬかせ!今日ここが貴様の死地だ!!」




技の通り一直線な気持ちの良い魔族さんだ。

来たら嫌だなぁと思っていたが、来ちゃったな。




(連撃3...クッ!!)




「うぉぉぉぉぉおおおおお!!!」




やはり止まらないか。

ノックバック無しでは行動を阻害できない。





(カウンター!)





カァァン!!!

また音が鳴る。しかし....





「っぁ...」




グサリと、俺の腹部に槍がめり込んだ。

多勢に無勢だ。

1人には対処できても、多数から硬直技の終わりに攻撃を差し込まれればこうなる。




「....っ」




続いて幾つもの武器や魔法が続く。

即座に風の範囲魔法で反撃するが、されるがままにされた一瞬で俺の体はもう穴だらけだった。





「遂に命運が尽きたようだな。故郷を言え、首は送ってやる」





膝をついた俺に、恐らく善意で言ったであろう言葉が少し面白くてただ笑みを浮かべた。






「首だけ送って貰っても俺は嬉しくねぇのよ」






(やっぱ無理っぽいわ。ごめんねミアちゃん、ヴォドさん。後は頼んだ、アッシュ)





再度の風魔法。

その隙に取り出したアイテムで自分自身の心臓を穿つ。

それは旅の途中で得た魔王の角。

魔界の地脈から魔力供給を受ける魔王と繋がり、一時的に同じことが出来る。




「なっ、貴様...っ!!」





地面へ即座にもう一つのアイテムを突き立てる。

即席の陣を築く場合に使用される広範囲結界の改造版だ。

莫大な魔力消費と引き換えに、強度と範囲を可能な限り高めてある。





背後の仲間と魔王が居る城はすっぽり覆った。

得た魔力が傷を覆い、体も思うように動かせる。

形成逆転だ。





「小癪な!どちらにせよ死ぬのだぞ!!」





そう。

これは諸刃の剣。

魔王と繋がり命の源を同じにする事で成り立つ絶対の防壁。

穿った心臓は魔王の角にその全てを依存しており、俺が体を動かせるのは地脈からの魔力供給あってこそ。つまり魔王が死ねば....





「でもこれで役目は果たせるってわけ。どう?全部終わるまでゆっくりするとか」




「くっ....良いだろう。その肉一片も残さず殺し切り、魔王様の元へ参らん!」




「ハハッ!やってみろやボケぇ!!」



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