表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/28

25話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「申し訳ないっす!!!」





「ダメ、許さない」





「申し訳ないっす!!!」





シェナはあれから三つ指ついてとても綺麗な土下座をキメている。

何度も謝っているが、サラちゃんが許す様子はない。

毒まで盛られて死にかけたんだから当然か。




「...そういやなんで私たちに攻撃したんだ?こいつも知り合いだったんだろ?」




メイちゃんが尋ねると、シェナは土下座のまま返した。




「ケイさんが捕まってるって思ったっす!保護魔法は身内にあんなかけ方しないっす!!」




「あー...」




メイちゃんが気不味そうに顔を逸らす。

分からないでもない。そんな感じだ。




「あれだと息も苦しかったと思うっす...」




「...そんなことない。メイたちにもずっと...」




「すいません師匠。あれ本当は結構息キツイです...」





沈黙。

飛竜の背で、ぴゅーと風が吹く音だけが響く。




ゆっくりと不安そうな目で俺を見つめるサーちゃん。





「窒息するかと思ったね!」






そんな彼女に、優しくトドメを刺す。

加減が分かっていないなら嘘はつけない。だって彼女はもう大人。

事実はちゃんと指摘しないと、今後これが理由で人が離れたら可哀想だ。



ガーンと物凄いショックを受けた顔をしたサラは、こちらに背を向け飛竜の隅で膝を抱えた。




「そんで話は戻るけど、よーこの街居たね。30年くらいやろもう」




サラの隣まで行って頭を撫でながら、再度話題を振る。

長く、そして遠くこの街を離れていた筈のシェナ。偶然居たにしても理由を知りたかった。





「あ...その、ま....偶々っすね.....」




「偶々かぁ。誰かに会いにとか?」




「....」




「あぁ...偶々ね...」





<たまたま>で押し切ろうとしている。

これは言いたくなさそうだと俺でも分かったのでそれ以上は聞かない事にした。




「ケイさんは、何故ここへ?お二人とはどんな...」




まぁ気になるだろう。

そこからはサーちゃん、メイちゃんに話した範囲内の情報を簡単に伝えた。



人神関係だけを隠し、

生き返り

次の魔王になった体

過去出会った人々を見る旅に出た現在




魔王の角の破壊を目的に、云々は言わなかった。

サラで学んだ。

言うと事態がややこしくなる。




「勇者一行の茶色はケイさんでしたっすか...」




「魔王直前でリタイアしたけど、ま一様ね!」





得意気に胸を張ってみる。

世界を救った勇者一行の一員。

これまで背負って来た言葉のどれより分かりやすく、それでいて何より誇れる肩書きだった。




そんな俺とは反対に、シェナの表情はどこか浮かない。

笑顔ではある。だが、なんだか「元気だ」と言いながらそう思っていない時のような...




「流石ケイさんっす。ヒリア地方の空裂きも噂にゃ聞いてました。ケイさんの教え子なら納得っすね」




「そう言うアンタは誰なんだ?あんな事出来んだから強いのは分かるが」




サーちゃんはいじけてしまったので代わりにメイちゃんが色々聞いてくれる。

つくづくしっかり者の弟子だなぁ。




「えっとね、この子はシェナ。俺はエナちゃんとかエナエナって呼んでる」




「シェナ?」




「30年前ここで冒険者やってた時の相棒やね。聖剣見つけたし、絵本読んでんねやったら知ってるよな」




「!?」




メイの顔が驚きに染まる。

だがそれは驚嘆、のような表情ではなくただただ唖然。

「えぇ....?こいつが?」

言わずともそう聞こえてくる顔だった。



さもありなん彼女の体格はとても小さく、またとっつきやすい性格だ。

絵本のようなダーティー具合を想像していたら受け入れ難くもあるだろう。




だが俺は彼女が根っからの冒険家であることを知っている。

ここはひとつ、肌を脱ごうじゃないか。




「そう!シェナの落とし物の主人公!歴戦の冒険家!生ける伝説ことシェナちゃんでーす」





「そんな...やめてくださいっす....」





自分としては場を盛り上げようとおどけてみたが、メイだけでなくシェナからも反応は悪かった。

俺はそれに首を傾げながらも、更に声を張り上げる。




「地図がなくても辿り着く!鍵がなくても見つけ出す!腕利き探検家ここにあり!宝があれば、行くぜこの世のどこへでも!!」





「......めてください」





「勘と腕が揃ったお人、これを本物って言うんだよ!偶然?いいや必然!さぁさお立ち会いお立ち会い!こちらにおわすは探し物なら天下一品、千里の果てまで嗅ぎ当てるシェナ様だ!」





「やめて下さい!!!」





恥ずかしいからではない。

本当の拒絶の言葉に口を止める。

お調子者の彼女がなぜ?



振り向いた先で、彼女は俯いて肩を振るわせていた。

握った拳からは血が垂れている。





「やめて...下さいっす。自分は、自分は...そんなんじゃ.....」





「いーや、いやいやいや。エナは凄いやつやって」





「だったら!だったらケイさんを死なせなかった!本当にそうなら!!あんな初歩的な罠見逃すことなんてなかったっす!!!」




また泣きそうだ。

にしても聞き捨てならないな。




「そりゃあ違うね」




「何が違うっすか...!」




「ミスなくなんでも出来るから俺ら一緒におったんか?君がなんでも出来たらさ、俺の出番がなくなるやろ?」




「...っ」





「互いに足りないところを補ってこその相棒。あれは君が見落としたんちゃう。俺の出番だったってだけ。そうやろ?俺の相棒」





「相棒...相棒だなんて....自分にそんな資格は.....」





大粒の涙を流しながらシェナが膝を付く。

食いしばった口元から、堪えきれないと嗚咽が漏れる。





「積み重ねたもんが嘘つくかって。絵本、ずっと見てたよ」




「.....ぁ......ぁぁ.....」





「エナはもうずっと前から、凄いやり手の冒険家。俺の自慢の.....相棒やんか」





「ぁぁぁぁぁ......ぁぁぁぁぁああああああ.....うわぁあああああああああああ!!!」





シェナは泣いた。

今度こそ泣いた。


大声で、なりふり構わず。





ふと、右手触れる暖かさに気づく。

視線をやるとサーちゃんが俺の手を握っていた。




「...」




目が合って彼女が頷く。




その姿に思わず笑む。

サーちゃんは変わった。


あの頃より寡黙だし、強引だし、どうやら人付き合いも子供の頃より不器用なように見える。

でも、こんなところは変わってない。



優しい子だ。

今も昔も。





答える代わりに立ち上がり、シェナの元へ歩く。

隣に座って、肩を抱いた。





ベルクミアの街が遠ざかっていく。

サラが飛竜を動かしたのだ。



ここまでの大暴れ、そのまま居れば間違いなく捕まるだろう。

爆発や毒霧は街の外とはいえ襲撃と勘違いされてもおかしくない規模だ。

離れるのは当然だな。





街が遠ざかるにつれてシェナの泣き声も小さくなっていく。

元来心は強く、泣きじゃくるような子ではない。収まりも早いか。



ここまで泣いた姿は初めて...いや、前にも泣いたのを見た気がするな。

そうそう。珍しかったので直ぐ思い出した。これで2回目だ。




前は確か出会って少し経ったころ。ダンジョンの探索にある浪漫について話していた時だったか。

シェナが子供じみただとか、馬鹿げた思想だとか言うものだから俺が意地になった。




自分の手で埋められた地図の空白

手付かずの絶景

かつての痕跡

強敵との邂逅

罠を掻い潜る生存の実感

誰も知らなかった真実



途切れた足跡とその先へ進む自分自身。




目的だけが肝じゃない。

レベリングは何の為か?

アイテムを買うのは、武器や防具を作るのは何の為だ?

目的は最奥にある宝なのか?

ノーだ。過程こそが全て。攻略こそが全て。俺達は冒険をするために冒険をするのだ。結果得る物はあくまでトロフィーに過ぎない。




遺跡の成り立ちに想いを馳せ、戦い、練り歩く...そんなマップ埋めが好きだった俺はついつい熱が入って否定する彼女へ同調しなかった。

言う度、彼女は涙ぐんで...なんでもないと言った。



なのに涙は止まらなくて。

次に次に溢れ出て。

その姿を見てやっと俺は察した。




その時の事を思い出して、ふと聞いてみる。





「なぁエナちゃん。今でも冒険は好き?」





「....っす」





「なんや、言えるようになったやん」





あの時の彼女はそれを好きだとすら言えなかった。故郷を飛び出して思うまま動けるようになってすら。

だからこそ泣いたのだ。

それが、今はこれほど自然に返せる。

その事実が友として堪らなく嬉しかった。





「好きで良かったやろ?それ」




「......!!」






あの夜を覚えているだろうか。

少しの不安は、すぐさまかき消えて無くなった。




大きく見開かれた目。

何かを言おうとして、つっかえているように開閉し震える唇。


そしてまた流れる涙が、その答えだった。






記念日を覚えているか試すような、少し女の子っぽい行為だったかもしれない。

気恥ずかしくて頬を掻いた俺に彼女が飛びつく。

正面から受けた俺の首筋を、彼女が噛んだ。



最初は遠慮がちに。

徐々に強く。何度も何度も。




獣人ゆえのスキンシップだろうか?

そう思い、頭を抱いてそれを受け入れる。

会話に気を遣ってこちらを向かないのであろうサラやメイは気が付いていないようだ。

良かった。昨日の感じ、サラはちょっとこの辺過敏だからな。




害意は感じない。むしろ感じるのは暖かく、心地いい感情。

嬉しい。嬉しいに決まってる。

きっと、再会を嬉しく思ってのことだ。





友人と抱き合って再会を喜ぶ。

そう、こういうのがしたかったんだよ。




ーーーーーーーーーーーーーーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ