883 これはペンです 上
完成した資料をルーセル様に届けた。
「凄く細やかな資料ですね」
「知っていることだけですよ。本当ならあと三枚くらい情報が欲しいくらいです」
今のわたしに用意できた資料は五行もない。式典や歓迎会での情報だけ。利き手はどっちとか立ち振舞い、誰と一緒にいたかだ。情報と言うのもおこがましいわ。
「ルーセル様も資料を求めるときはこのように求めてください。情報不足は判断を誤らせます。一番よい決断をするためにも情報はしっかりと集めなければいけません」
「わ、わかりました。注意します」
「他の者も情報の重要性をよく学びなさい。あなた方次第でルーセル様の立場が決まるのですから」
厳しくも言うべきことを言わないとルーセル様が責任を負うことになる。ひいてはゴズメ王国の不利益となる。王国を支える立場にいるなら甘い考えは許されないのよ。
「か、畏まりました」
他国に送られるだけあってよくわかっているようでなによりだわ。
「ルーセル様。いつになるかわかりませんけど、名前と顔だけは覚えておいてください。将来、この中の候補者と長い付き合いが始まるのですから」
よほどのアクシデントがなければ、だけどね。
「本当は王子の情報も欲しいのですけど、わたしの身分では収集できません。ルーセル様のほうから王子との話題を仕入れてください」
この世界がゲームや漫画の世界ならそんな一大イベントを逃すわけがない。わたしが知らず知らずのうちに潰していたらごめんなさいだけどね。
まあ、妃候補者の中にいきなり男爵令嬢とかはいなかった。最低でも伯爵令嬢だった。外見的にもまんま令嬢としっかりした者しかいなかった。
妃候補者と結婚してしまえば妾を何人持とうが関係ない。わたしとしたら好きにしたらいい、だ。
だけど、妃にしたいとか言い出したら介入はさせてもらう。コルディーを混乱させる者は不要だ。しっかりと排除してやるわ。
「失礼します。侍女長様がお嬢様に面会を申し込んでおります」
「あの方は行動が早いわね。許可を出して、侍女長様のご都合に合わせますと」
そう言えばすぐにやって来るでしょうよ。
って思ってたら三十分後にやって来たちゃったよ。王宮からの距離を考えたら出してすぐ出て来たわよね!
「忙しいところごめんなさいね」
「いえ、大丈夫ですよ。どうかなさいましたか?」
帰れとも言えないのだ、さっさと本題に入りましょう。
「この資料よ。姿を写す魔法があるのかしら?」
「どこかにはあるではないのでしょうか? わたしは付与魔法の応用で写しております。少し劣りますけど、見たものを絵にするペンというものもありますよ」
錬金の壺で作ったペンを出した。




