870 バランス 下
「お茶も美味しいわ。これ、本当に紅茶なの?」
「製法が違うだけで、お妃様方がよく飲まれているものです」
苦いコーヒーみたいなのは焙煎したからじゃないかしら? 過程がわからないからなんとも言えないけど、烏龍茶みたいな感じで作っているのじゃないかしら? この世界の品種にもよるんだろうけど。
わたしは錬金の壺があるので、記憶にある紅茶を再現できる。コーヒー豆を入手するほうが難しいわ。今はゴズメ王国に入る豆を使ってコーヒーを作っているけどね。
「あなたが作ったものなの?」
「はい。美味しいお茶が飲みたかったので」
「チェレミー様のところは美味しいもので溢れていました。紅茶もリンゴ味、柑橘味、牛乳を入れたものと、その日の気分で楽しめましたわ」
ルーセル様は紅茶派だ。たまに自分で淹れることもあるくらいよ。
「これなら毎日飲みたいものだわ」
「商人に命じて売店の机に入れれば紅茶葉ができます。ただ、机にも限界があるのでなにか一つに集中したら他の生産が低くなりますのでご注意を」
机に仕込んだ錬金の壺にはリミッターをかけている。無尽蔵に作っていたら技術が衰退するからね。貴族だけの特権とすれば民間で造り出すことでしょうよ。
「食の技術はあなたのところが一番なのね」
「ありがとうございます」
お妃様に一礼する。
ここではルーセル様が主であり、お妃様とミシエリル様がお客様。わたしは、ルーセル様のお付きでしかない。席に座ることなく台車の横に控えた。
「お妃様。お昼もご一緒させていただけませんか? ゴズメ王国の料理を知っていただきたいので。チェレミー様、どうかしら?」
「厨房は問題ありません。三人分でしたらわたしでもお作りできますので」
「チェレミー嬢が作るのですか?」
「そう手の込んだものは時間がないので作れませんけど、簡単に作れるものは問題なく作れます。時期的にモルテが収穫できるので鶏肉を使った煮込みと、海鮮揚げを作りましょう」
モルテはトマトみたいなものね。酸味が強いけど、ミゲ(海藻)の出汁を使えばなかなか美味しい煮込み料理になるわ。
海の魚も油で揚げて食べると美味しいわね。ムゼングで食べた料理は今も舌が覚えているわ。
「チェレミー嬢は、料理人並みの腕を持っているの?」
「さすがに本職には負けますね。家庭料理並み、だと思います。たまに気が向いたときに作るていどですから。ご一緒なさるのならすぐに取りかかります」
「そうね。ご一緒させていただくわ。取りはかってちょうだい」
わたしや連れて来た侍女が畏まりましたと頭を下げた。




