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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第16章

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869 バランス 上

「失礼します。お茶とお菓子をお持ちしました」


 客間にはお妃様の他にジーヌ公爵夫人、ミシエリル様もいた。


 珍しいと言えば珍しいお方だ。お妃様にそう近い立場にいなかったように見える。公爵様も重役についているってわけではなかった。


「あなたがお茶を淹れるの?」


「はい。お菓子もわたしが作りました」


「チェレミー様は料理人並みに腕があるのですよ。カルディム領で食べたほとんどのものはチェレミー様が考案したものでした」


「伯爵令嬢が料理をするなど初めて聞いたわ」


「わたしは隠遁した身。もう表舞台に立つことはありません。好きなことを好きなだけになれる身であり、令嬢らしからぬことをしても非難されることもありません。やりたかったことをやっているまでですよ」


 ここにいるのもチェレミー・カルディムとしているわけではない。名もない令嬢として記録も残さないようにしているわ。


 お茶を淹れ、フルーツタルトをカットしてご三人に出した。


「これもあなたが?」


「はい。ゴズメ王国産のものを使って作りました」


「なんとも鮮やかなお菓子ね」


「料理は栄養を摂るだけのものではありません。見て楽しみ、嗅い楽しみ、食感や味で楽しむ。文化そのもの。食を疎かにする国に発展はありません。人が食を諦めぬ限り、人とともにある存在です」


 美味しいものを食べられない人生などつまらない。常におっぱいを感じられないのなら食で慰めるしかないわ。


「ルーセル様。どうぞ」


 毒味役なんて文化はコルディーにはない。魔法で簡単に解毒できる。解毒できない毒なんて料理の原型をなくしてしまう。見ただけでわかる。


 それでもなにもないことを示すように主が先に食べたり、身分の低い者が先に食べたりするわ。その辺はケースバイケースね。


 今回はルーセル様が先に食べて安全を示してもらいましょう。


「美味しいです! やはりチェレミー様が作るお菓子は一味違いますね!」


 たぶん、無意識に付与魔法が働いているのじゃないかしら? 魔法はイメージみたいなところがあり、わたしの思いが魔法になって物体に施されるのでしょうよ。


 ルーセル様が食べたことでお妃様もミシエリル様もフルーツタルトに手を伸ばした。


「美味しいわ」


「はい。こんな美味しいもの初めてです」


 国のトップに位置する方々が本心から言っているセリフなら終わっているわよね。いや、お酒でコルディーのレベルは知っていたけど、お菓子もそこまでレベルは高くないようだ。おっぱいは高レベルばかりなのにね。バランスよく発展するって難しいものなのね……。

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