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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第16章

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868 フルーツタルト 下

「すぐに用意を。ルーセル様にも伝えて」


 ルーセル様には誰か来るかもとは伝えてある。すぐに準備できるでしょうよ。


「お嬢様。お着替えなさいますか?」


「このままでいいわ。ルーセル様が主役だしね」


 お妃様との話は以前したし、お妃様もルーセル様を蔑ろにしてわたしと会話はしないでしょうからね。ルーセル様に出迎えていただきましょう。


「ラム酒のパウンドケーキを作りますか」


 お妃様、お酒が好きみたいだしね。そう甘くないラム酒の効いたパウンドケーキでもお土産に持ち帰っていただきましょう。


「お嬢様。お妃様がいらっしゃいました」


 ラグラナが伝えに来た。


「わかったわ。ルーセル様を補佐してあげて」


 わたしはまだパウンドケーキを作るので手が離せないのよね。


 黙々とパウンドケーキを作っていると、小さなネズミが現れた。


「酒はあまり得意ではないんだがな」


 小さなネズミのために作ってないですからね。


「甘すぎないか? 酒精が弱いぞ」


 なんでこいつらはこんなに自由なんだろう? 傍若無人ってこのことをいうのね。ついでだから魔力をいただいておきますか。


「……日に日に魔力を奪うのが上手くなっておるよな……」


「今、殺す気で魔力を奪っただろう? 残り僅かな魔力を容赦なく奪っただろう!」


 否定はしない。遠慮もしない。けど、それでも死なないとか、絶対、仕掛けがあるでしょう? 


「お妃様に渡すものなんですから摘まみ食いしないでください」


「その代償が大きくないか?」


「正当な仕事には正当な報酬が与えられるべきだぞ」


 ブーブーとうるさいカスどもだ。


 仕方がないのでコノメノウ様にはドライフルーツを漬けこんだラム酒を。タルル様には紅茶を混ぜたバームクーヘンを差し出した。


「お前はまだこんなものを隠しておったか!」


「乾燥させた果物を漬けているのか。梅酒みたいなものだな」


「正当な報酬を払ったのですから出てってください。まだ作るものがあるんですから」


 ネズミに齧られたものは侍女にあげるとしましょう。こういう利点がないと仕事も楽しくないでしょうからね。


「お嬢様。ルーセル様がお菓子をお願いしたいそうです」


 やはり一人ではお妃様を相手にするのは辛そうね。助けを求めて来たか。わたしが必要ならお菓子を頼むように伝えておいたからね。


「わかったわ。フルーツタルトとパウンドケーキを運んでちょうだい。お茶はわたしが淹れるわ」


 付与魔法を施した台車に入れてもらう。


 お茶はわたしの収納の指輪から出して台車に移した。これを欲しがらないといいのだけれど、念のため作っておくとしましょうか。


 手を洗い、身だしなみをしたらルーセル様の部屋に向かった。

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