867 フルーツタルト 上
歓迎会は挨拶だけで終わり、次の日は休みとなった。たぶん、誰かは来るでしょうけど、それまではゆっくりできるわ。
「そなたは令嬢らしからぬことするよな」
蜂蜜酒片手にカスが厨房に現れた。
「いや、令嬢らしからぬところしか見てなかったわ。すまんすまん」
わたしはなにを謝罪されたのだろう? ケンカ売りに来たのなら喜んで買いますよ。
「令嬢が厨房に立つとはな」
「最近、大きなネズミが厨房に忍び込んでいると聞いたもので」
「あ、腹が痛くなってきた。では──」
ウソが下手か! まったく、いつか退治してやるからね。
「チェレミー様。果物を切りました」
「ありがとう」
王城に入るにはそれなりの身分が必要になるので、ガイルやナディアを連れて来れなかった。王宮が料理人を用意してくれたけど、さすがにお菓子は作れないので、わたしのサポートをお願いしているわ。
クッキーを潰して皿を作り、蜂蜜を塗ってコーティング。さらにカスタードクリームを塗ってゴズメ王国産のフルーツを並べて行く。
「こんな菓子があるのですね」
「王城の菓子職人はいないの?」
「おりますが、こんな鮮やかな菓子を作る者はおりません。こんな鮮やかな果物もありませんので」
「残念ね。作れたのなら喜ばれるでしょうに」
電子レンジや道具がないと大変でしょうけどね。ハンドミキサーがないとカスタードクリームを作るだけで挫けそうになるわ。
「焼きリンゴも作りましょうか」
料理人にカスタードクリームを作ってもらい、わたしはリンゴを焼くとする。干し葡萄も加えるか。
誰か来そうな予感がするから他の料理人にも手伝わせて大量に作った。
「タルル様。一緒に添えられたくないのなら摘まみ食いは遠慮してください」
魔力を全開まで奪ってやる。
ネズミ捕りを仕掛けないといけないわね。まったく、離れはネズミが多すぎるわ。
「チェレミー様。余った果物を使ってよろしいでしょうか? 忘れないよう練習しておきたいので」
「構わないよ。道具も使って構わないわ。侍女たちにも食べさせてあげなさい」
魔力もいただいたしね。錬金の壺でチーズケーキタルトとチョコレートタルトも作っておきましょう。
「タルトを切って、いつでも出せるようにしておいてちょうだい。紅茶も忘れずにね」
フルーツタルトを持ってルーセル様のところに向かった。一緒に食べるとしましょうかね。
「お嬢様。お妃様がいらっしゃるそうです」
お妃様が来ちゃうんかい! お付きの方々だと思っていたわ。
まったく、予想がつかない行動をしてくれるお妃様なんだから。




