866 歓迎会 下
別室は歓迎会場から少し離れており、会場の声は微かにしか聞こえない。
ゴズメ王国側の侍女と王宮が用意してくれた侍女が整えてくれているので、別室は快適空間となっている。
ルーセル様をソファーに座らせ、付与魔法で化粧を払い、温タオルで顔を拭いてもらう。
「よくがんばりました。もう少しです。最後まで気を抜いてはなりませんよ」
「はい。わかりました」
本当にお姫様は大変よね。わたしなら義務と責任で暴れているところだわ。おっぱいの重さならいくらでも堪えられるけど。
付与魔法で疲労軽減はしているけど、精神的疲労は相当なものでしょう。おっぱいを揉んでリラックスさせてあげたいわ。
とは言え、リラックスするにはまだ早い。最後まで油断できないのだからね。
「化粧を」
侍女たちがルーセル様を化粧し、ミント(マグライカ)ティーを飲んでもらう。気休めだけど、口を爽快にさせてあげましょう。
「明日はお休み、とはいきませんが、美味しいお菓子を作りますので気を休ませましょう」
誰かはやって来るでしょうけど、正式なものではない。お茶会くらいなものだ。今日のように胃を痛めることもないわ。
「久しぶりにロールケーキが食いたいな」
お前は黙ってろ。カスが。
「わたしはフルーツタルトが食べたいです」
「はい。とっておきのを作りますね」
甘いものを求めるほど疲れているんでしょうね。夜はわたしがマッサージしてあげますから。
「時間です」
休憩は十五分。まったく、歓迎会も考えて欲しいものだわ。
衣服を直し、髪を整える。
会場に戻ると、お酒の臭いがちょっと満ちていた。かなりの人数が飲んでいるみたいね。
「……あのカスは……」
なに混ざって酒飲んでんだよ、テメーは。この中にカスを止める妖狐はいねーのかよ!
「チェレミー様? なにかおっしゃいましたか?」
「いえ、なんでもございません。皆様にお酒の感想をお聞きしましょうか。まずはルング公爵ご夫妻です。胸に緑の宝石をつけた方です」
近くにいるルング公爵ご夫妻に照準を合わせ、ルーセル様に向かってもらうことにする。
「公爵様よりご夫人のほうがお酒が好きなようです。お酒の味を訊きましょう」
挨拶したとき妻が酒好きで~と言っていた。真っ先に声をかけるには適した方々だわ。
「わかりました」
ルーセル様の背後に移動し、秘蔵のウイスキーを出して床に置いた。
「お、美味そうな酒──」
近寄って来たところを全力で魔力を吸いとってやった。
「これを別室に」
コルディー側の侍女に酒カスを回収してもらう。
大人しくしてろやと睨みつけ、ルーセル様のあとに続いた。




