865 歓迎会 上
歓迎会は読んでいた通り、挨拶合戦となった。
通常なら国王陛下との挨拶が先になると思うのだけれど、他国の姫では対等にはならないのだろう。
それは仕方がないとは言え、ここは出ておくべきだとわたしは思う。コルディーの使者がゴズメ王国に行ったとき会ってもらえなくなるわよ。国力差はあっても属国ではない。ゴズメ王国としても同じ返しをせざるを得なくなるわ。
これはお妃様に進言しないといけないわね。外交という以前に客をもてなし方を知らなすぎるわ。
それに引き換え、高位貴族は機を見るのが聡い。バカではやってられないを証明しているわ。
今日だけで最高位貴族(公爵家)の顔をすべて集められそうな勢いだわ。
と言うか、もう五十人もの最高位貴族と挨拶を交わしている。本当に挨拶だけで終わりそうね!
付与魔法を駆使しなければ覚えられる数と顔ではない。頭にチップでも埋め込まないと不可能でしょうよ。この人たち、どうやって名前と顔を覚えているのかしら? 名札でも下げてんのか?
よく観察するけど、そんなものはない。本当に記憶しているだけなの? どんな教育しているのよ?
ま、まあ、わたしには無理なので付与魔法を駆使して名前と顔を記録しておきましょう。伯爵令嬢でしかないわたしに名簿(あるかどうかは知らないけどね)を見る手はない。自ら名前と顔を晒してくれるのは千載一遇でしかない。折れそうな心に活を入れて名前と顔を記録して行った。
「ルーセル様。飲み物を」
ゴズメ王国側の侍女もタイミングを見ているので、途切れたところでルーセル様に飲み物を飲ませている。付与を施してなかったら倒れていたわね。
わたしも飲み物をもらい一息つく。
ハァー。わたしも最高位貴族が何人いたかわからなくなってきたわ。これで侯爵ともなれば膝から崩れ落ちる自信しかないわ。わたし、こういうの苦手だわ……。
「チェレミー様。そろそろルーセル様が限界に近づいております」
ルーセル様の侍女がコソッとわたしに伝えて来た。
「わかったわ。例の物を出してちょうだい。ルーセル様」
「二国の友好を祝してゴズメ王国の蜂蜜酒を持参しました。蜂に刺されたことがある方には柑橘酒がございます。この出会いに乾杯をさせてください」
休憩タイムのために用意した蜂蜜酒と柑橘酒を出してもらった。打ち合わせって大切よね。
「おー。蜂蜜酒か。なかなか美味いな」
「こんなに甘いお酒なんて初めてだわ」
皆様方が飲んでいる間にルーセル様を別室に移動させる。これなら十五分くらいは稼げるでしょうよ。




