863 歓迎式典 上
午後の四時くらいからルーセル様の歓迎式典が開かれる。
なんで午後四時からやねん! と思う方々もいらっしゃるでしょう。わたしも聞いたときはそう突っ込んでしまいました。もちろん、心の中でね。
コルディーの貴族の時間だとそのくらいが適度らしいのよ。
夕方くらいから集まり出し、十八時くらいから本格的に始まり、二十一時くらいに終わる。
すべてがすべてそうではないらしいけど、今回はよくある時間で進めることになったらしいわ。
他国の姫を迎える。
コルディーでは前代未聞。これと言った作法もなければ決まりもない。なにが失礼に当たるかもわからない。お互い、探り合いとなる歓迎式典になる。
故に、多少の行き違いがあっても容認致しましょうって決まりを作ってある。
わたしもルーセル様のお付きとしてベールを被っての参加が認められたわ。
王城には大規模式典を行える場所が三つあり、今回は大聖堂を使うとのこと。
守護聖獣様を祭る大聖堂でもあり、ゴズメ王国の守護聖獣たるタルル様もいるからそこに決めたそうだ。
他の者はあまり、と言うか、完全に無視しているけど、それは守護聖獣様に触れるのを恐れているからみたい。
わたしには獣にしか見えず、最低限の礼儀を払っておけば魔力を全部奪っても構わないと思っているけどね。
いや、怖がっているってのは正しくないかしら? 畏怖と言えばいいのかしらね? 恐れてはいるけど敬ってはいる。コルディーの民にもゴズメ王国の民にも守護聖獣とともに生きてきた歴史があるから神社みたいな存在なのかもしれないわね。
そこにあるのが当たり前。でも、蔑ろにはできない。賽銭箱の前に立てば手を合わせるけど、普段から手を合わせるために来たりはしない。
コルディーの民もゴズメ王国の民も守護聖獣様がそれなりの場所に立てば祈ってしまう。そんな感じなんでしょうよ。
……あれが現行の守護聖獣様か。まさに妖狐だわ……。
守護聖獣、辞めまぁ~す。とか言って辞められたら王も民も堪ったものじゃない。守護聖獣あってのコルディーだ。そんなこと許されるわけがない。ましてや守護聖獣様も生き物だ。寿命ってものがある。永遠には生きられない。
それ故に百年くらいで交代するとコノメノウ様が言っていたわ。なにもなければ出番なし。そこにいるってのがお仕事。ニートなら天職でしょうけど、そうでないのなら苦行でしかないわ。
「よく来た、隣国の姫よ。そして、お久しぶりです、タルル様」
今回はタルル様もルーセル様の横にいるわ。ゴズメ王国の守護聖獣としてね。
「うむ。久しいな。世話になる」
あれで現行の守護聖獣様より歳も格も上なのだから爆笑ものよね。皆さん、ここは笑うところですよ。
「ゴズメ王国ルーセル姫。そして、友を歓迎する」
現行の守護聖獣様の言葉とともに集まった貴族たちが拍手をした。




