861 加減が大事 上
なんとか昼前にメッセージカードに感謝の言葉を書き上げられた。
「ところで、誰が届けるのかしら?」
侍女には侍女の仕事があり、わたしが関わることではない。出しておいてと言えばいいだけ。気にする必要もないのだけれど、ちょっと気になったのでラグラナに尋ねてみた。
「それぞれの侍女が集まるところが王城にあります。そこに行って取り次いでもらいます」
「時間、かからない?」
王城に侍女が何人いると思っているのよ。って、ラグラナは知っているか。
「仕方がありません。わたしどもが直接行って渡すことはできませんから」
まあ、そりゃそうだわな。警備上の問題もあるしね。自由に行けたら暗殺者だって行けるってことになるわ。
「仕事を楽にすればその者の仕事を奪うこととなる、か。加減が難しいわよね」
効率が神かと言ったらそうではなく、無駄が不要かと言ったらそうでもない。どちらも行きつく先は人間不要。格差社会。今もそうだと言ってしまえばその通りだけど、今はそれを感じさせないし、当たり前と思わせている。要は加減。飴と鞭の使い分けが大事ってことだ。
「仕事がなくなるのは悲しいです。お嬢様に楽しく仕えているので」
「楽しかったの?」
なんか楽しいことあったかしら? 結構仕事振っていたんだけどな~。
「人らしく生きられています。他の者もお嬢様の下から離れたくはないでしょう。他を知れば知るほど」
「あまり吹聴しないでね。ひがみ嫉みを受けたくないから」
それで上と下の不協和音が生まれたら大変なことになる。なんとかしろと言われて来たら知らんとしか返しようがない。そっちの待遇など知ったこっちゃないわ、だ。
「もちろんです。誰も自分の仕事を奪われたくありませんから。ただ、ウワサはもう流れております。お嬢様に仕えたらいい暮らしができると」
また迷惑なウワサが流れているわね。
「まあ、王都の屋敷を維持する者は必要よね。今は王宮から人を借りているからいいけど、ルーセル様が帰ったあとも借りていたいしね」
またルーセル様が来たときのためにもあの屋敷はわたしの管理下に置いておきたい。また借りるのもめんどうだしね。
「レイラ様にご相談されては如何でしょうか? いろいろ男爵家と繋がりはあるでしょうし。働きたい夫人や娘はいると思いますよ」
なるほど。そこは盲点だったわ。お母様とは違う伝手があるか。
夜会をやった中に入るくらいの家ではあるしね。横の繋がりを持っていても不思議ではないわ。
呼び鈴を鳴らしてレイラを呼んだ。




