855 売国奴 上
お妃様や高位貴族で華やかに見えるけど、やっているのは井戸端会議。生産性があるかというと、なかなかあったりする。まあ、わたしに、だけどね。
国のトップにいる方々。その口から話される内容はトップシークレットと言ってもいいものばかり。それをまるで理解してないのがさらに背筋を凍らせるわ。
いやまあ、この方々もいろいろ不満はあり、愚痴を吐きたいのでしょうけど、それをルーセル様の前で言っちゃイカンでしょう。ルーセル様の側役としてわたしだけしかついてないからまだいいけどさ~。
止めようかと悩んだけど、王国を揺るがすようなことは言ってはいない。ルーセル様もわかっていない。よほどのことが出ない限り、流すことにした。
やっているのは井戸端会議なので、二時間もしゃべれば皆様方も疲れてくる。そんな雰囲気を感じ取ったお妃様がお開きとした。
ルーセル様を招いてやることか? など頭の隅で思ったり思わなかったり。とりあえず、いただける情報はありがたくいただきました。
テラスの外に待機していたルーセル様の侍女にバトンタッチして、お付きの方々も去ったらテラスに戻った。
中にはお妃様の侍女たちが入っていた。やはり見えないところに控えていたか。
「どうかしたの?」
「進言です。次回からルーセル様を誘うときはコルディー内の事情を話さないほうがよろしいかと」
「なぜかしら?」
気づいてないんかい。
「ゴズメ王国も一枚岩ではございません。自分が間者だとわからず配置されている者もいます。ルーセル様の会話からコルディーの事情を知り、反対勢力に伝わることでしょう。それを避けるためにもルーセル様に聞かせていいこと、悪いことを前もって選別してください」
「それを知っていて止めなかったの?」
「わたしはルーセル様の側役として立っていました。そんなわたしがお妃様たちの会話に入れば何事かと思われます。それも伝われば警戒されるでしょう。あまり他国の者を信用してはなりません」
国王の妃なら尚さら。ルーセル様にも油断したらいけないわ。
「あなたはどちらの立場なの?」
「わたしはコルディーの貴族です。王国の利益を優先するのは当然であり義務でもあります。だからこそ、友人となる国は持つべきだと考え動いております。コルディーと対等と思える国が海の向こうに存在します。いざというときのために仲間を集めておくことはコルディーの国益となるでしょう」
帝国は帝国の利のために動いている。それが当たり前。他国の繁栄より自国の繁栄を優先するものだ。それを許している者は売国奴。国賊と言うのだ。
「どうかコルディーの損となることはお控えくださいませ」
床に片膝をついて深々と頭を下げた。




