745 マスコットキャラとは? 上
「お嬢様。使節団が到着なさいました」
使節団とはルーセル様たちのことよ。名前がないのも呼び難いでしょうからね。
「部屋は用意できている?」
「はい。改築も終了しております」
旧館を宿泊施設に改築し、ルーセル様が住むところにしたのよ。今から館を建ててられないからね。
「まずはそちらに通して休んでもらって」
迎えに出たいけど、わたしは席から離れられないほど忙しいのよ。メイベルに任せてちょうだい。
出発前に叔父様や関係各所に指示書を出しておかないとならない。これは、ゴズメ王国に行ったときもやっていたこと。後方を気にしないようにやっておかないと前線で戦えないわ。
夜遅くまで手紙をしたため、お風呂に入る力もなく椅子に凭れながら眠りについてしまった。
ふと起きると、知っている天井が見えた。あと、久しぶりにキャラメルがいた。※89話※
いや、コノメノウ様に使役されているところは何度も見ているけど、こうして部屋に入ってくるのは久しぶりじゃないかしら?
「なんか大きくなったわね」
今ならわたしでも跨がれるんじゃないかしら?
「ガウ」
「……鳴き声が可愛くない……」
仕方がないとは言え、マスコットキャラとしては失格ね。
「ガウガウ」
と、ベッドに上がって来た。いや、重いって。
「お腹空いたそうよ」
翠玉がキャラメルの頭に下り立った。
忘れている方もいるでしょう。正直、わたしも忘れていました。
渦の核となっていた魂であり世界樹によって新たに生まれた妖精です。
「厨房に行きなさいよ」
「もう行って来た帰り。でも、もっと食べたいんだって。ここなら食べる物がいっぱいあるそうよ。わたしも食べたかったからついて来たの」
なんでマスコットキャラにしようとしたものは食に貪欲になるのかしらね? もっと可愛くありなさいよ。
「よく食べるわね」
「育ち盛りだからね」
お前らもう成長してんだよ。育ちすぎてんだよ。うちの食費崩壊させる気か!
と言いたいところだけど、受け入れたのはわたし。飼い主としての責任を果たさなければならない。面倒みきれないのなら最初から飼うな、だ。
仕方がないわね、とベッドから出て、引き出しから肉まんとあんまんを出してあげた。
冬になったら売店で売ろとしていたものだ。やっぱり、これがないと冬って感じがしないわ。
「ほぉう。それが新しい菓子か?」
いつものように忽然と、いや、当然のように現れる菓子カス様──じゃなくてタルル様。盗聴機より高性能に聞き取れる耳である。
「違います。ちょっと小腹が空いたときのおやつですよ」
「なんでもいい。お茶を淹れろ」
わたし、起きたばっかりなんですけど。と言っても無駄だろうからお茶を淹れることにした。




