742 魔力炉 下
「……難しいだろうか……?」
「そう、ですね。いくつかの問題を解決しないと無理でしょうね」
その問題をどう解決するかが問題なのよね。
「不可能、と言うわけではないんだな」
「国王陛下の名の下、売店を中止したら問題はすべて解決しますよ」
「それをしたらさらなる大問題が起こるのではないか?」
「そうすればわたしは関係なくなります」
国王陛下の問題に移り変わり、わたしが口を出すことではなくなる。まさに理想の結果だわ。
「それでは困る。なんとかならぬだろうか?」
「そもそもそこが間違っていますよ」
「間違っている?」
「そうです。端的に言えばわたしになんの決定権もなく、なんの情報も寄越さない。なのに、なんとかしろと言うばかり。手足を縛られ、さらに口を聞くことすら許されない状況で答えなんて出せるわけもありませんよ」
わたしはそこまで万能ではない。できないことはできないのよ。
「…………」
「伯爵であるラルフ様を動かすほどの方です。かなり高位の方なんでしょう。お妃様が直接言うことはないでしょう。なら、その下の方で、王宮でもかなりの発言権を持つ方。侯爵夫人、と言ったところですか?」
確か、ウワサではお妃様を支える二人の侯爵夫人がいると聞いたことがあるわ。
「侯爵様は貴族派の重鎮で、大臣にもついているとか。まず伯爵位では太刀打ちできませんね」
さらに公爵夫人まで派閥にいる。睨まれたらコルディーでは生きて行けないでしょうよ。
「ハァー。ラルフ様になにかあってはわたしが困ります。わたしが動きましょう」
動くとしてもかなり先だと思っていたのにな~。まさか売店で早まるとは夢にも思わなかったわ。
「解決策はあるのか?」
「あるだけです。それを目指すにはいくつもの問題を解決せねばなりません。決して簡単な道ではありませんよ」
呼び鈴を鳴らしてラグラナを呼んだ。
「どうかなさいましたか?」
「王宮に連絡を入れて。チェレミー・カルディムが王宮に参ると。その準備をして欲しいとね。意味はわかるわね?」
わたしは王都を追われた身であり、悪いウワサを持つ身である。人目に触れず、人のウワサに上がらぬようにしろ、ってことだ。
「は、はい。強く伝えておきます」
「ええ。ちゃんと伝わることを切に願うわ。お互いのためにも、ね」
予定は狂ったけど、一度は見ておきたかったのよ。王宮の中をね。フフ……。
「ん? なにか?」
ラグラナとラルフ様がなにやら青い顔をしている。具合でも悪いの?
「……あ、いや、なんでもない……」
「すぐに伝えます!」
ラルフ様には顔を逸らされ、ラグラナは逃げるように部屋を出て行ってしまった。
なによ?




