741 魔力炉 上
「ラルフ様が戻って来た?」
ラグラナにそう報告されて首を傾げてしまった。
「帰って来た、ではなく?」
お城が完成するまで二、三年はかかる計算だ。完全受注生産、と言っていいのかは謎だけど、ラルフ様にお任せしている。それまでここが拠点となるのだから戻って来たはなんか違くない?
「え、あ、そうですね。ラルフ様が戻って来たとおっしゃいましたので、ついそう報告してしまいました」
「で、戻って来た早々、わたしに面会を求めてきた、と」
「は、はい」
嫌な予感しかしないわね。
「まあ、いいわ。通してちょうだい」
嫌だからと言って逃げられるわけでもなし。さっさと聞いておきましょう。
「畏まりました」
ラグラナが下がり、一分もしないでラルフ様が部屋にやって来た。益々嫌な予感しかしないわね。
「仕事中、すまない。急ぎだったものでな」
「構いませんよ。なにかありましたか?」
ソファーに座るのを勧め、引き出しからお茶を出してあげた。
「売店で少し問題があった」
「少し、ではないのでしょう。ラルフ様自身がわざわざ戻って来たのですから」
正直に言っちゃってくださいな。問題事が減るわけでもないんですから。
「チェレミー嬢に遠慮は不要か」
いや、別に不要ではありませんからね。必要なときには遠慮してくださいませ。
「売店が人気すぎて回らなくなってきた」
「技術的にですか? それとも仕組み的にですか?」
商人が来ないのなら技術的かしら?
「たぶん、根本的にだと思う。王宮や城では何百人と働いており、訪れる貴族を混ぜれば千人を越えるだろう。そこで売店が十もないのは間に合わないのだ」
丼だけ~! じゃないわね。どんだけ人気になってんだか。大国の中心部なんだから物なんて溢れているでしょうに。
「それに、魔力が足りてない。いや、供給が間に合わいというべきだな。チェレミー嬢が用意してくれた机、もっと改造できないだろうか?」
改造、ね。わたしの見積りが甘かったか。
「できなくはないですけど、たぶん、それではその場しのぎしかならないでしょうね。さらなる問題が出てきて破綻するだけです」
まったく。恐れていたことがこうも早くやって来るとは思わなかったわ。
コノメノウ様から髪の毛をもらい、半永久機関炉が可能となったときからこれは問題となると思っていた。
まあ、人間、目先の欲には勝てないもの。館に半永久機関炉──魔力炉を設置し、館のインフラの半分以上は魔力炉に委ねている。快適な暮らしはなにものにも代えられないのよ。
「では、どうすれば?」
それはわたしが聞きたいくらいだわ。誰か我に知恵を授けたまえ!




