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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第15章

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740 十七歳 秋 下

 沼まで来ると、なにやら屋台が四つほど並んでいた。


「なにあれ?」


「屋台よ。ここに来る者が増えたから商売しているみたいよ」


 まあ、一キロくらいだから来れない距離ではない。遊びに来るには手頃な場所か。


「汚さないようちゃんと指導してね。ここは長老様がいる保護区なんだから」


「わかっているわよ。マルシアによく言っておくわ」


「あの地豪ちごうとは上手くやれているの?」


 あれから一度も会ってないし、様子も聞いてないのよね。メイベルの管轄だから。


「元気にしているわ。身だしなみを整えたから貴族には見えるようになったわ」


 そうなんだ。てか、見えたとして地豪に必要か? まさかドレスを着て町を歩くわけにもいかないでしょうに。


「そろそろマルシアの腕を治してあげたいのだけれど、どうかしら?」


 そう言えば、片腕なかったんだっけね。


「これをコノメノウ様に渡してお願いしてみなさい」


 指輪に入れていたハクカ梅で作った梅酒を取り出した。


「コノメノウ様に?」


「すっかり忘れていたけど、コノメノウ様なら失った腕すら回復する力を持っているわ」


 わたしの火傷を治せるとか言っていた。必要もないからすっかり忘れていたわ。


「……引き受けてくれるの……?」


「引き受けないときは梅酒を渡さなければいいのよ。ただ、最高級にできがよい梅酒を飲めないだけなんだからね。そうなったらわたしがなんとかするわ」


 時間はかかるけど、腕の一本ならわたしでも生やすことはできる。ただ、魔力を使いたくないからコノメノウ様にやらせようってだけだ。


「あっさりしているわよね。わたし、コノメノウ様と話したことないわよ」


「そうなの? 話したことなかったっけ?」


 わたしの中では……どうだったかしら? 気にしたこともなかったわ。


「コノメノウ様に挨拶くらいならしたことはあるけど、話したとは言わないわ。貴女ぐらいよ、コノメノウ様に臆せず話をする者なんて」


「敬う気持ちが欠片もないからね」


 わたしの中では完全に酒カスになっている。敬えと言われても敬うなんてできないわ。


「噛みついたりしないから恐れず話しかけなさい」


 珍しく現れないところをみると、梅酒の研究でもしているのでしょう。なに気にわたしが作る梅酒を参考にしているみたいだからね。


「それなら話しかけてみるわ」


「そうしてみなさい」


 せっかく来たのだから長老様に声をかけてから帰りましょうかね。


「長老様~! 元気にしてますか~!」


 通訳がいないので返事をしているかはわからないけど、リンゴを投げたら水に入り出した。


「幸せそうでなによりだわ」


 わたしもおっぱいだけを愛でて幸せに生きたいものだわ。

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