740 十七歳 秋 下
沼まで来ると、なにやら屋台が四つほど並んでいた。
「なにあれ?」
「屋台よ。ここに来る者が増えたから商売しているみたいよ」
まあ、一キロくらいだから来れない距離ではない。遊びに来るには手頃な場所か。
「汚さないようちゃんと指導してね。ここは長老様がいる保護区なんだから」
「わかっているわよ。マルシアによく言っておくわ」
「あの地豪とは上手くやれているの?」
あれから一度も会ってないし、様子も聞いてないのよね。メイベルの管轄だから。
「元気にしているわ。身だしなみを整えたから貴族には見えるようになったわ」
そうなんだ。てか、見えたとして地豪に必要か? まさかドレスを着て町を歩くわけにもいかないでしょうに。
「そろそろマルシアの腕を治してあげたいのだけれど、どうかしら?」
そう言えば、片腕なかったんだっけね。
「これをコノメノウ様に渡してお願いしてみなさい」
指輪に入れていたハクカ梅で作った梅酒を取り出した。
「コノメノウ様に?」
「すっかり忘れていたけど、コノメノウ様なら失った腕すら回復する力を持っているわ」
わたしの火傷を治せるとか言っていた。必要もないからすっかり忘れていたわ。
「……引き受けてくれるの……?」
「引き受けないときは梅酒を渡さなければいいのよ。ただ、最高級にできがよい梅酒を飲めないだけなんだからね。そうなったらわたしがなんとかするわ」
時間はかかるけど、腕の一本ならわたしでも生やすことはできる。ただ、魔力を使いたくないからコノメノウ様にやらせようってだけだ。
「あっさりしているわよね。わたし、コノメノウ様と話したことないわよ」
「そうなの? 話したことなかったっけ?」
わたしの中では……どうだったかしら? 気にしたこともなかったわ。
「コノメノウ様に挨拶くらいならしたことはあるけど、話したとは言わないわ。貴女ぐらいよ、コノメノウ様に臆せず話をする者なんて」
「敬う気持ちが欠片もないからね」
わたしの中では完全に酒カスになっている。敬えと言われても敬うなんてできないわ。
「噛みついたりしないから恐れず話しかけなさい」
珍しく現れないところをみると、梅酒の研究でもしているのでしょう。なに気にわたしが作る梅酒を参考にしているみたいだからね。
「それなら話しかけてみるわ」
「そうしてみなさい」
せっかく来たのだから長老様に声をかけてから帰りましょうかね。
「長老様~! 元気にしてますか~!」
通訳がいないので返事をしているかはわからないけど、リンゴを投げたら水に入り出した。
「幸せそうでなによりだわ」
わたしもおっぱいだけを愛でて幸せに生きたいものだわ。




