715 婿殿 下
「マリアラ様。少し状況が変わってきました。ルゼット様に面会できるよう取り計っていただけますか?」
我関せずと食事を続けていたマリアラ様。他人事ではいられませんよ。
「は、はいぃ!?」
そんなうわずった返事をしなくても……。
「こやつに関わると苦労が絶えんよな」
「わかるわかる」
苦労の大半はテメーらが持って来てんだよ! 足腰立たないくらい魔力を奪うぞ、ゴラ!
「ル、ルゼットにですか? いや、転移が二日後にありますけど」
「二日もあれば行って帰って来れます。あとは、タルル様に転移させてもらいますので」
「すっかり馬車扱いしおって」
「お嫌でしたら断ってくださっても構いませんよ。あー残念。キャラメルはロッカルにあげましょうかね」
「もぉう。やらぬとは言っておらんではないか。ほら、寄越せ。キャラメルとやらを。どこにでも連れてってやるぞ」
守護聖獣としてのプライドとかないんかい! いや、最初からなかったわね。うん……。
「マリアラ様。よろしくお願い致しますね」
「……は、はい……」
快く引き受けてくれてなによりです。
「ローラ、マクライと一緒にロッカルの基本的教育をお願い」
二人はお兄様を教育していた者たち。貴族としての基礎を教えるのはお手の物でしょうよ。
「畏まりました」
ローラがやる気満々で返事をした。なんで?
「お嬢様には血より能力が高くなければともに過ごすことはできないでしょう。ロッカル様が見つかったことはありがたいことです」
「婿と書いて生け贄と読むようなものだな」
「小僧、がんばれよ。愚痴りたいときは聞いてやるからな」
ロッカルの肩を叩き、優しい笑顔を見せるコノメノウ様。わたしをなんだと思っているのかしらね? なんか凄く失礼だわ。
「なに? この空気は? またチェレミーがなにかしたの?」
食堂にやって来たメイベルが空気を読まずに入って来た。てか、わたしがなにかした前提かい!
「メイベルにも報告しておくわ。この子をわたしの婿とするから」
「あら、可哀想に」
ナチュラルに放つメイベルさん。あなたもわたしをなんだと思っているのかしらね?
「わたし、伴侶を不幸にする趣味はないわよ。愛人作り放題の妻なんて寛容じゃない」
「そのくらい許されなくて貴女の夫なんてやってられないでしょう。幸不幸感が人とまるで違うんだから。ちゃんと幸せにしてやりなさいよ。あなた、名前は?」
「ロ、ロッカルと申します」
「チェレミーが目をつけるだけのことはあるわね。なにかあればわたしに相談しなさい。これから長い付き合いになりそうだからね」
コノメノウ様のように優しい目をするメイベルさん。
なんだろう。周りすべてが敵な感は……?




