714 婿殿 上
「しかしよいのか? 養子にするにしてもその小僧に魔力はないぞ」
ないんだ。わかってはいたけどね。
「魔力があったからと言って国になにかしらの利益を与えている貴族は何人います? ただ、箔にしかなっていないのが現状です」
今の貴族はあるだけを誇る権威社会。それが悪いってわけではない。わたしは使えもしないものに価値を見出だせないだけだ。
「魔力のあるなしなどどうにでもなります。魔力判定なんていくらでも誤魔化せますからね」
魔力判定は昔の人が作り出した謎水晶で行われる。あれならわたしでも作れるわ。なら、誤魔化せることもできるってこと。問題ないわ。
「不正宣言か?」
「不正? 法に乗っ取っての検査をさせますよ。仮に不正をしているとして、見抜けない検査方法に欠点があると思いませんか?」
疑問に思うこともなく、改善することもない。怠慢としか言いようがないわ。
「ああ言えばこう言うヤツだ」
「言われたくないのなら言われないよう変えるなり廃止するなりすればいいのです。この世は正しいことをすればいいというわけではありません。騙す者もいれば利用する者もいる。食うか食われるかの世界だと理解するべきです」
優しい世界ならそれでもいいでしょう。でも、この世界は厳しいものだ。さらに言うなら搾取している貴族がアホ言ってんな、だ。
「ロッカル。野望を持つのはいいでしょう。実に好感が持てるわ。でも、手段は選びなさい。欲を他者に見せないようにしなさい。本音と建前を完璧に使いこなせるようにしなさい」
「そなたはなんの教育を施しておるのだ?」
「婿としての教育です」
「はぁ? 婿?」
「はい。ロッカルをわたしの婿にします」
結婚などしたくないけど、わたしを引き込もうとしたら結婚させる方法を取るでしょう。
火傷もいつまで効果があるかわからない以上、別の方法を探さねばならなかった。
ナジェスの補佐役にしたかったけど、思いの外、ロッカルの野望が強く才能を持っていた。
ナジェスの補佐役はまた今度にして、ロッカルをわたしの婿に育てるとしましょう。
「ロッカル。わたしはあなたが愛人を何人持とうと気にしないし、歓迎するわ。愛人にそれ相応の暮らしも用意してあげる。あなたがのぞむならわたしの子としてわたしのすべてを受け継がせてもいいわ」
「こやつはまたとんでもないことを言い出しおったぞ」
「悪魔との契約とは、きっとこんな光景なんだろうな」
黙れ、クソカスども。
「大丈夫。あなたを飼い殺しにするつもりはないわ。それ相応の仕事と報酬を約束してあげる」
「それ相応と言うところにこやつの悪辣さが凝縮されておるよな」
「哀れな幼子よ。強く生きろよ。陰ながら幸せを祈ってやるからな……」
ほんと黙れよ、クソカスどもが!




