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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第14章

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711 家名ロンダリング 下

「ルゼット様に手紙を書きますので、マリアラ様からも承諾の手紙を書いていただけますか?」


「マルビオ家にどんな得があるのでしょうか? チェレミー様の言葉ならルゼットは聞きそうですけど」


 姉だけに呼び捨てなんだ。マルビオ家の繋がりがよくわかるわね。


「まあ、貸しですね。マルビオ家でなにか困っていることありますか?」


 すぐにあるとは言えないでしょうけどね。


「……特に思いつかないわね……」


「なにか困ったことがあったならわたしがお力とならしていただきますわ。わたしにできることなら、ですけどね」


 できないことはできない。その辺のことよく考えてくださると助かります。


「……わかりました。すぐに書きましょう」


「ありがとうございます」


 マリアラ様が部屋を退出したらわたしも叔父様に説明の手紙を書いて出してもらうよう指示を出した。


「お嬢様。少年の身なりを整えました」


「ありがとう。部屋に通して」


 すっかり見た目が変わったロッカル。なかなか美少年じゃない。ちゃんと育てないと女性を泣かしちゃいそうだわ。


「そこに座りなさい」


 ソファーに座らせ、お茶を出してあげた。


 部屋にはわたしとロッカルだけ。二人で話す必要があるからだ。


「今の状況は理解できている?」


「いえ、我を失わないようにするのが精一杯です」


「あなたは本当に賢いわね。生まれもっての才能を活かしてきたのね。それはどれほどのものか、よくわかると言ったら気に触るかしら?」


 孤児が言えるようなセリフではない。生まれもって知能が高く、努力せねばならない環境だったのでしょう。


「……い、いえ。お嬢様を見たとき、上には上がいるのだと理解しました。自分がいかに自惚れていたかも……」


「それは経験の差ね。貴族の社会で生きるのも厳しいものよ。今の自由を手に入れるのに顔を焼かねばならなかったわ」


 火傷をしたところを指でトントンと叩いてみせた。


「狂気だと思う?」


「……は、はい。そこまでするものなのかと思います……」


「ふふ。正直ね。わたしは好ましいと思うけど、貴族の社会では誰も理解できないことよ。理解できないからわたしと接触してくる者は少ないわ」


 これだけ好き勝手やっていて介入してこないのはそれが理由だ。理解できないからこそどう接していいかもわからない。前世とは価値観がまったく違うのだ。この差がさらに歪を生むのよ。


「どうしても欲しいものがあるなら覚悟が必要。失わないためには知識が必要。他者を理解するには時間が必要。必要なものが揃うまで身を隠すことも必要。あなたに選ばせてあげる。それでも先に進みたい? 欲しいもののために進める? それが厳しい道だとしても」


「……すっ、進みたいです。おれは、惨めな人生などしたくないです! 人として生きたいです!」


 やはりこの子は危険だ。貴族にする必要がある。下手したら平等とか口に出しかねないからね。特権を与えて責任を持たせるとしましょう。


「いい返事だわ。その思いを忘れないように」


 変な理想論を持たないように、ね。

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