710 家名ロンダリング 上
ロッカルを連れて館に戻った。
「マリアラ様をわたしの部屋に連れてきてちょうだい」
突然戻ってきたことに驚くこともない。すぐにマリアラ様にメイドが走った。
「この子を綺麗にしてあげてナジェスの服を着させてちょうだい」
ロッカルをメイドに任せてわたしは部屋に戻った。
すぐにタグナー(115話)に手紙を書き、続いてタルティール家(男爵)にも手紙を書いた。
「お呼びでしょうか?」
タイミングよくマリアラ様が部屋にやって来た。
「突然すみません。お忙しいでしょうか?」
「チェレミー様が呼んでいるとなれば商人たちは文句が言えませんわ」
商人たちと打ち合わせしてたのね。
「単刀直入に申します。養子をとっていただけませんか?」
「本当に単刀直入ですね」
まあ、これからちゃんと説明するけどね。
ナジェスの腹心となるロッカルをまずタルティール家の養子としたら次にマリアラ様の養子にする。それでロッカルはマルビル家の流れを組む者となる。ってことを説明させてもらった。
「……また、無茶なことをなさいますね……」
「法的に問題はありません。養子をとるのは許されていますからね」
法に詳しいわけじゃないけど、養子話はよく聞く。何代も血が続く貴族なんてそうはいない。どこかでどこからか血を混ぜている。よくも悪くも血より家名なのだ、この国は。
「最終的にはロッカルを男爵にさせて、ナジェスの腹心とさせます」
「……こんなことチェレミー様にしかできませんね……」
「やる気と伝手があれば誰でもできることですよ」
「……それほどの子供なのですか?」
「まだ原石ですけど、磨けば美しく輝くでしょう」
教育と環境で人は磨かれるもの。ロッカルを貴族として磨き上げましょう。
「運がよいのか悪いのか。チェレミー様に見つかったのが運の尽きですね」
「自ら火に突っ込んできたのです。その覚悟があったということです」
今、何気にディスりました?
「貴族と関わるということは波乱の道に突っ込むというこです」
責任と義務があり、個人より家が優先される。その家のために生きてきたマリアラ様ならよくわかるはずだ。
「そう、ね。覚悟がなければ貴族として生きられないわね」
「だからと言って悲観することはありませんわ。貴族なら貴族ならではの幸せを求めたらよいだけです。マリアラ様は今、辛いですか?」
にっこり笑って問いかけた。
「……いえ、辛くないわ。それどころかやっと自分を取り戻したかのように清々しく感じているわ」
満足する答えにうんと頷いた。




