706 おっぱいしか愛せないわけではない 上
食事が終われば最初の村に向かった。
領都の周辺には小規模の村がそれなりにある。
領都の台所を支える村であり、歩いて二時間もかからない距離だ。領都に近いからそう不便でもない。最初の野営(?)はそこでいいでしょう。
歩いて二時間の距離なら馬車でなら三十分もかからない。旅ってよりお出かけみたいなものね。
でも、ルーセル様にはどちらでも同じなようで楽しそうにしている。
村に到着。兵士に触れを走らせてあるので村総出で迎えてくれた。
対応はナジェスに任せる。一応、叔父様に領主代理代行の任を与えてもらい、ちゃんと記録に残してもらい、ナジェスには日誌を書くように言ってあるわ。
「ナジェス様、なにか大人びましたね」
「ええ。男の子は成長が早いですわ」
肉体もだけど、精神的にも成長したわ。
「従姉としてはちょっと複雑ですね。いつまでも可愛い従弟でいて欲しい思いもありますから」
おっぱいしか愛せないと思っていたわたしが、ナジェスやレアナを可愛く思ってしまう。でも甘やかしたりはしないわよ。この厳しい世を生き抜ける知恵と技術はちゃんと持たせてあげるわ。
「わたしもチェレミー様のような姉が欲しかったですわ」
「なにを言っているんですか。わたしたちは姉妹ですよ。この旅はルーセル様のためでもあります。わたしは貴女をお妃様以上の女性に育てるつもりですから」
目を大きくさせるルーセル様。あら可愛い。
「貴女はゴズメ王国史上、初めて外国に留学されたお方。必ず歴史に名を残すでしょう。先駆者としてね。そんなお方がお妃様を超えられないようでは困ります。他国を知り、世界を知り、何度でも自分を超えてもらいます」
王宮も他国の王女とどう接していいかわからないから動いていないだけ。それを担当する部署もないのだからね。
この旅は王宮への配慮でもあるし、ルーセル様を鍛える時間でもある。早くても来年から動き出すでしょう。その前に王宮と対峙できるまでは育て上げるわ。
「ゴズメ王国も最初、わたしをミューズ男爵様のところに預けたでしょう。それは、わたしにゴズメ王国のことを学ばせるためであり、他国の令嬢をどう相手するかを考えるための時間でした」
あ、ミューズ男爵、城にいるはずだけど、すっかり忘れていたわ。ちゃんと挨拶しないといけないわね。
「そ、そんなことを考えていたのですか?」
「他国と関わりのある国だからこそ考えられることです。そして、ゴズメ王国の重鎮たちはそれだけの知識と経験を兼ね備えているということでもあります」
外交力で言えばコルディーより上でしょうよ。
「コルディーは大国故にその辺のことに思案を巡らせることができません」
「そ、そんなことおっしゃってよろしいのですか?」
「不敬でも言わねばならないときに言えぬ者は王国に不要です。首を斬られても言わねばなりません。そして、上に立つ者はそんな者を側に置かねばなりません。王国を先に進ませるためにはね」




