1177 人心掌握 下
馬車が湖に到着すると、人の往来が増えていた。
「やはり早々に警備をする者を置かないとダメか」
今はまだ騎士団がいてくれるから秩序は保たれているけど、騎士団が去ったあとは無秩序に襲われるでしょうね。
「教会区として立ち入り禁止にするしかないか」
まだ建物を建てるような猛者はいないようだし、整備目的で立ち入り禁止すればあまり文句も上がらないでしょう。公爵様の領地とは言え、頭ごなしの命令をしていたら信頼ってものが育たない。これからを考えたら公爵様の評判を落とすわけにはいかないわ。
馬車を降りると、騎士様たちが現れて人垣を排除してくれた。
「ハーベルク様が動いてくださっているのね」
やる気があるようでなによりだわ。聖騎士団として組織して、世界樹の騎士として広める算段も考えないと。いや、それはメイベルにお願いしましょうか。きっといい物語を書いてくれるでしょうよ。
「アルバン様。騎士の人事権は誰が握っているので?」
てか、勝手に動かしたわたしにお咎めってあるのかしら? どこかの派閥から声が出ても不思議ではないのだけれど?
「陛下だ」
「騎士団を纏める大臣はいらっしゃらないので?」
「いないな。必要もなかったので」
なるほど。だから自由に動けたのね。いや、動かせたが正しいか?
「いないのなら今から考えておいたほうがよろしいですよ」
「必要か?」
「必要になったとき、苦労するのは宰相様です。そして、手足となって動くのはアルバン様。がんばってください」
わたしがやるわけじゃないのだからご愁傷様と言っておくわ。
「チェレミー様!」
お願いして呼んでいた職人たちが声をかけてくれた。
「突然の呼び出しにも応えてくれてありがとう」
「いえいえ。チェレミー様の呼び出しなら喜んで参りますとも」
他の職人たちも笑顔だ。これだから信頼関係って築いておくものなのよね。
「そう言ってもらえて助かるわ。実は、ジーヌ公爵領の職人たちに聖女教会の建物と、催事場、催事船と、百年先まで残るものを造って欲しいの。あと、数百年先まで残る技術を受け継いで欲しいと思っているわ。あなたたちの技術は絶対に残さなければいけない。そのためにも国王陛下に働きかけるわ」
宮大工的なものを今から創っておかなければ聖女教会の存続にも関わるし、観光地化もできない。ジーヌ公爵家の職人はがんばってもらいましょう。
「苦労はかけると思う。けど、あなたたちの力が必要なの。どうかお力を貸しください」
職人たちに頭を下げた。わたしはおっぱいのためなら足でも舐める覚悟があるわ。フンスー!




