1175 *ミシエリル* 2 下
ここを去る準備に入ったのでしょう。説明が終わると、チェレミー嬢が使っていた部屋をわたしの部屋に整え始めた。
「ミシエリル様は、お妃様の側を離れることになりますけど、一度、挨拶に戻ったりするので?」
「そ、そうね。挨拶をしなければいけないわね」
お側役は役職ではない。お妃様にお願いされて側についているだけだ。それでも離れるとなると、挨拶に行かなければならないわね。
「お妃様としてはミシエリル様に離れられるのは困るでしょうね」
「わたしは側役の一人でしかないわ」
妃候補者の教育を任されたとは言え、それも役職を与えられたわけではない。お妃様の代理として任されていただけだ。
「これまではよかったでしょう。今回のこともなければ。そして、隣国との関係もなければ。しかし、これからはそうはいきません。妃としての仕事や役割は多大なものとなるでしょう。なのに、一番支えとなるミシエリル様がいなくなる。その消失は日に日に大きく、多大な損失と感じるでしょうね」
ハァーとため息をつくチェレミー嬢。いや、それはお妃様がつくため息でしょうよ……。
「……許してもらえないかしら……?」
「そのときは代案でも出してください」
「代案? あるの?」
「いくつかあります。お側の方々を教育する。人を増やす。大臣に放り投げる、とかですね」
どれもお妃様としては飲めないものばかりだわ。
「あなたのことだから最適な答えがあるのでしょう?」
そろそろチェレミー嬢のことがわかってきた。まず飲めない答えを出してくることがある。それは最適な答えを持っているときだわ。
「妃候補者の中から側近を選べばよろしいでしょう。次期妃たる者と面識があり、今回のことにも携わり、ルーセル様とも親交がある。これほどの人材はいないでしょうよ」
本当に欲しい答えを出してくる。
それならお妃様も納得してくれるでしょうし、受け入れなければならない。さらにジーヌ家との繋がりも継続させてくれている。
他にもなにかありそうな気がしないではないけど、わたしもその答えを蹴るなんてことはできない。それ以上の答えを持ち合わせてないのだからね。
「わかったわ。そう代案を出すとするわ」
「それと、世界樹の葉は肌に体にも良いらしいものです。湯船に浮かべるとよいでしょう。世界樹から落ちた枝は必ず拾って家具を作るのもいいですよ。空気を清浄にしてくれる効果もありますから」
世界樹は、それだけの価値があるということなのね。
「がんばってください」
そう、ね。チェレミー嬢にばかり頼ってはいられないわね。依存してしまったらチェレミー嬢の操り人形でしかないのだからね。




