1174 *ミシエリル* 2 上
守護聖獣様がこの娘を認めるのもよくわかる。わたしたちにない、人間の矜持を持っているからなのね……。
どこに神に挑むと言える者がいるというの? 矜持のために神に挑む? この娘でなければ一笑に付せるところでしょうよ。
しかし、この娘は神に、現人神に挑み、その矜持を示した。退かせたという。
わたしが天上人じゃなくても貴族に矜持を示して来る者など恐怖でしない。権力も財力も武力さえも一笑に付せているのだからね。
もうどちらが現人神だかわからない。認めざるを得ないじゃない。この娘と敵対しては絶対にダメだとね。
……味方にしたらしたで胃は痛くなるけどね……。
チェレミー嬢の言葉には誰も逆らえない。反論もできない。意思を示さなければならないとわかっているのに、誰も口を開くことはできなかった。
旦那様はよくやっていると思う。当主たる意地と勤めで。わたしは口を出せないでいるわ。間違っていればお妃様にも口を出したというのに、だ。
これはもう格の違いでしょうね。家や歴史を受け継いだだけのわたしたちでは対抗できない圧倒的な実力。実力の前では地位も爵位も関係ないのだとわかったわ……。
「ミシエリル様。女性陣を集めてください。わたしから説明致しますので」
すぐに女たちを集めた。
「不安でしょうけど、まだやるべき仕事はありません。少しずつ慣れていけばよろしい。まずは、聖女誕生祭、なるものを来年に向けて行いましょう。計画書はあります。人の配置も大まかには決めてあります。それを指南書として一つ一つ片付けていけば身につくようにしてありますので」
部屋に籠ってなにをしているのかと思ったら、こんなことまで考えていたとは。わたしなんかの頭ではついていけないわ。
「この組織図のように動いてもらい、ジーヌ家の領民を使って誕生祭を行います。これは練習なので失敗しても構いません。むしろ、失敗してください。成功より失敗からのほうが多く学べますからね」
失敗から学ぶ、か。わかっていても貴族相手に失敗できる者はそうはいないでしょうね。わたしだってお妃様の前で失敗なんてできないのだからね。
「この指揮は、ミシエリル様に行っていただきます。その頃にはわたしはジーヌ家を離れているのですからね」
「いなくなるのですか!?」
てっきりいてくれるのかと思っていたわ!
「当たり前です。わたしにもやるべきことがありますので。ただ、問題が出たのなら手紙をください。わたしが使っている机を置いて行きますので。手紙を引き出しにいれたらわたしに届きますので」
さらっと凄いこと言っているわね。離れた場所に手紙が届くとか、役人が喉から手が出るほど欲しがるわよ。




