1087 *ラデガル* 3
屋敷にいる会員から緊急の手紙が届いた。
手紙はチェレミー様からのもので、緊急の依頼だった。
チェレミー様がジーヌ公爵領に行っているのは聞いているが、緊急とは穏やかではない。まあ、あの方といると、穏やかなことはないがな。
「馬車を用意しろ!」
まだ内容はわからぬが、屋敷に向かったほうがいいと馬車を用意させて飛び込んだ。
走る馬車の中で手紙を読むと、なにかのお伽噺か? みたいな内容だった。
だが、あの方ならお伽噺みたいなことに遭遇しても驚きはない。伯爵令嬢でしかない方が今や王国の中枢部どころか他国のことまで関わっている。そこにお伽噺が加わっても驚きはない。
「大通りに面した商会か」
商業連合会の中ではなら大体が大通りに面した場所に店を構えている。が、手紙の内容からして人の目が集まりやすい場所を求めているのだろう。
考えている間に屋敷に到着すると、大きいところの商会の馬車が集まっていた。
「主な商会すべてに出したのか」
これはかなり重要なことらしいぞ。
馬車から出て来た者らもそう感じたのだろう。頷き合い、商業連合会の会議室に向かった。
「やはりすぐに集まりましたか」
会議室にはチェレミー様の側近となったライグ男爵夫人がいた。
「もちろんです。チェレミー様からの緊急な依頼ですからな」
「ええ。なにを置いてもチェレミー様が優先されますから」
すっかりチェレミー様に感化されておるな。まあ、自分もそうなので皆と一緒に同意の頷きをしておいた。
「チェレミー様からはこの宝珠を人目が集まる場所に急いで設置して欲しいそうです。可能なら今日中に、だそうです。かかった費用は後日、二倍を支払うそうです」
ライグ男爵夫人が宝珠のついた杖を五つ、どこからか出現させた。
「畏まりました。すぐに動きます」
なぜとかは問わない。チェレミー様が急ぎと言うなら我らは従うのみ。望みを叶えるまでだ。
「各自、手紙を読んで候補は上げてきたな?」
「ああ。たくさんの人の目に触れることが目的なのだろう」
「五つなら候補は絞られるな」
「うちは目の前に広場があるから一つはわたしが受け持とう」
「カルゼルク商会も同じだ。わたしが交渉しよう」
「金はわたしが用意する」
チェレミー様の才能とひととなりに集まった者たち。速やかに役割を決めていった。
「では、各々方、チェレミー様に失望されぬ働きをさようぞ」
おう! と呼応し、それぞれの馬車に向かった。
「ふふ。だからチェレミー様はおもしろいのだ」
なにか使命を受けたようで、わくわくが止まらなかった。




