1086 *メイベル*
机の上にある鈴がチリンと鳴った。
誰からの合図なのかわかってしまうから不思議よね。いったいどんな魔法なのかしら?
机の引き出しを開くと、手紙が入っていた。
「今度はなにをしたのかしらね?」
きっと碌でもないことでしょう。あの子が行くとこ行くとこ問題しかないからね。
ため息を一つ吐いて手紙を読んで、頭が痛くなってきた。
「……なんのお伽噺を話しているのかしら……?」
湖の底に城? 骸骨兵? 王都守護騎士団を集結させた? 月の姫? もう一度読んでも意味がわからなかった。
「なにやってんのよ」
あの子が原因とは思わないけど、あの子ならもっと穏便に解決できたはず。必要があって事を大きくしたのでしょう。なにか事態を変える好機とか思ってね。
ただ、あの子が関わるとコルディーを動かすほど大きい事態になる。つい最近までは妃候補者と関わりにあっていた。いや、まず伯爵令嬢如きが関わり持てるような存在ではない。マルビオ家ですら妃候補者になるのは難しいのに、なんで中心にいるのかしら? まあ、それだけの力を持っているからなんだけどね……。
「まったく、唐突すぎるのよ」
三度目の読み直しでなんとか内容を理解……はできないけど、あの子のやりたいことはわかった。
「ほとんど隠蔽じゃない。変な罪にならないでしょうね?」
あの子なら罪にならないギリギリを攻めて、ギリギリ責めにならないようにするんでしょうけど。わたしのほうに罪をなすりつけないでよ……。
「四度読んでもお伽噺としか思えないわよね。空に浮かぶ月から来た? なんかそんな話をあの子から聞いたような気がするわ」
あの子は小さい頃、いろんな物語を書いており、今回のような物語もあったはずだ。
「マルビオに置いて来ちゃったか」
持って来たものを探したけど、あの子からもらった物語集は置いて来てしまったようだ。叔母様、いたかしら? マルビオに飛んでもらえないかしら?
なんて悩んだけど、なるべく早くとの注文があったし、題材としてはおもしろい。創作意欲が湧いて来たわ。
「ふふ。楽しくなってきた」
呼び鈴を鳴らして侍女を呼び、執筆前に身を清めるとする。
「マクライ。チェレミーから仕事を頼まれたからしばらく部屋に籠るわ。食事は運んでちょうだい。重要な採決以外は部屋に入らないで」
「……お嬢様から、ですか。またなにか致しましたか?」
小さい頃から知っているからか、呆れた顔をしていた。
「かなりとんでもないことを致したようよ。書き上げたら真っ先に読ませてあげるわ」
わたしと同じく戸惑うといいわ。
部屋に入り、書くためにコーヒーとお菓子を机に並べた。
「メイベル・マルビオ、一世一代の作品にしてやろうじゃない」
まずは妃候補者たちの友情から書いて行きましょうかね。フフ。




