1084 先んずれば人を制す 上
事の結末は見えている。
骸骨マンを倒し、月の姫様を解放する。それ以上でもなければそれ以下でもない。決まったことだと言ってもいいでしょう。
問題は事の顛末をどうするかだ。皆さんはそこを気にしていることでしょう。
まあ、これも別に難しいことではない。こちらの都合のよいよいに纏めたらいいだけのこと。王城も王宮も手を出して来ないんだからね。
いや、王城も王宮も守護聖獣に任せたのが間違いなのよ。この事が伝わらない、もしくは遮断できると思っているのかしらね? 臭いものに蓋をしたいならわたしが介入する前に動かなければいけなかった。それか、お目付け役としてわたしの横に立たねばならなかったのよ。
タルル様はまだわかっている。ゴズメ王国の守護聖獣として働いているからね。
ただまあ、そこがタルル様の、いや、守護聖獣の限界なんでしょうね。王政でも民主制でも民を蔑ろにしたらダメだってことをわかってはいないのよ。上に報告したら終わりと思っているんだからね。
「なんだ? 呆れたような顔をしおって」
「いえ、タルル様はどう報告するのかな~、と思ったまでです」
いけないいけない。顔に出てしまったようだわ。
「見たままを伝えるまでだが」
やっぱりね。守護聖獣はいい意味でも悪い意味でも素直なのよね。人間の底意地の悪さをまるでわかってないわ。
「悪いのか?」
「なに一つ悪くはありません。真実は正しく残すべきですからね」
間違ってはいない。真実は大事だからね。わたしも真実はしっかりと残すタイプだもの。
「……なにか含みがあるような言い方だな……」
「いえ、外と繋がりを持つゴズメ王国でもそのていどなんだな~と感じたままです」
ゴズメ王国としては真実を知っていてもらったほうがこちらとしてはありがたい。コルディーを理解してもらうためにもね。
「侮辱か?」
「いえ、事実を事実として受け取ったまでですよ。コルディーはまだまだ遅れているんだとね」
コルディーにわたしと同じ転生者がいたとして、王城にも王宮に影響を及ぼすところにはいないと証明している。まずわたしの邪魔をすることはできない。ありがたいことだわ。
「ふー。手が痛いわ~」
ずっと書きっぱなしで腱鞘炎になりそうだわ。付与は施しているのに。
「随分と余裕だな。手紙など書いている場合か?」
「それが場合なのですよ。結末が見えた状態では」
今のわたしが見ているのは顛末。この出来事が終わったあとのことだ。誰にも悟られる前に動かなければならないのだ。
書いた手紙をアイテムボックスワールドへと入れ、各所へと送った。
「タルル様。先んずれば人を制す、ですよ」
それがわたしの戦いだ。




