1070 守護聖獣 上
「申し訳ありません。失敗しました」
妃候補者の天幕へと向かい、失敗したことを謝罪した。
「……そ、それだけ厄介なのですか……?」
マリン様が震える声で尋ねてきた。
「はい。想定外すぎました。まさか常軌を逸した存在だとは夢にも思いませんでした」
隠すことはせず、正直に皆様方に伝えた。
「ご安心を、とは言えない状況ではありますけど、まったく手がないわけではありません。次の戦いのためにお休みください」
最初に魔力をいただきすぎた。マリン様以外は立っていることもできない状態だ。
「チェレミー様は、大丈夫なのですか?」
「わたしは大丈夫です。これと言った働きはしておりませんので」
膨大な魔力をいただいたことで体力も魔力も満タン状態。さらにコノメノウ様千人分は余裕で溜めることができたわ。
「ラーレシム様。声はまだ聞こえておりますか?」
「はい。少し大きくなったような気がします」
「やはり呼ばれている声ですか?」
「最初はそう思ったのですけど、これは、助けを求めているような感情が籠った声のようです」
助けを? 閉じ籠められているってこと?
「わかりました。ラーレシム様もお休みください。もしかしたらラーレシム様にも出陣してもらうかもしれませんので」
わたしにはなにも聞こえなかった。なら、ラーレシム様だけが頼りになるってことだわ。
「はい! わたしで力になれるのなら!」
役立たずな自分が嫌いで怖かったのでしょう。役に立たない者は無慈悲に排除するのが貴族だからね。
「ありがとうございます。では、そのときに備えて休んでください。敵はこちらの体調など気にしてくれたりはしませんからね」
精神安定の付与を施し、ベッドに座らせた。
「皆様方もお休みください」
笑顔のまま天幕を出た。
「警備、お願い致します。いずれ敵はこちらの状況を見抜くでしょう。そのときは──」
「皆までおっしゃらなくても大丈夫です。我々は騎士の務めをまっとうする所存ですから」
捧げ剣をする騎士様方に、黙って頭を下げた。下手な言葉は不要だからだ。
顔を上げたら振り返ったりせず、わたしが瞑想(おっぱいを見る意)していた天幕に向かった。
防御壁を張っていたので被害はなし。ソファーに腰を下ろした。
「いるのでしょう」
そう問いかけると、目の前に幼女が現れた。
「気づいておったか」
コノメノウ様より冷たい笑みを浮かべた。人化は幼女じゃないとダメな決まりでもあるのか?
「二つの騎士団を動かすような女を無視するほど優しくはないでしょう? 仮にもコルディーを守護する聖獣様なのだから」
「まあ、そうだな。あの姉様を手懐ける者だ。気にならないわけがあるまい」
姉様? コノメノウ様の妹か?
「排除するなら今しかありませんよ」
「できるか。その肩にわたしより強い存在がいるのだからな」
へー。タルル様のほうが上なんだ。守護聖獣の強さはよくわからないわ。




