1069 かぐや姫かな? 下
不味いわね。高濃度すぎて魔力吸収が追いつかないわ。
「タルル様。なんとかできますか?」
「無理だ。わたしより遥かに高位存在だ。なんともできん」
高位存在、か。確かに、人の身でどうこうできる存在ではないわね。下手に触ると蒸発しそうだわ。
「逆になんとかならんのか?」
「難しいですね。今も魔力を物質化させているのですけど、とんでも勢いで溜まっています。このままだと溢れてしまいそうです」
ありがたい限りだけど、無限に湧き出る魔力とか害でしかない。世界の均衡を崩しかねないわ。
「下がりましょう」
幸いなことにこの高濃度の魔力は外に漏れてはいなかった。この空間に止まっていてくれるってこと。一旦退避だわ。
「お二方。下がります」
限界を迎える前に撤退をする。
どこかに領域の界があるようで、階段まで戻ると、あの高濃度の魔力がウソのように消えてしまった。
「ふー。とんでもなかったわ」
闇の気配に満ちているのに、澄んだ空気のように美味しかった。聖衣を纏っていなかったら発狂していたことでしょうよ。
「ラインフォード様、ハーベルク様、撤退してください。命令です」
遥かに身分が上でもこれは聞いてもらわなくちゃならない。あんな永久機関を持たれたらこちらに勝ち目などないわ。作戦変更だわ。
「わたしたちも速やかに下がります」
騎士たちの撤退は両騎士団長にお任せ。足手まといはさっさと逃げ出させてもらいます。
「シューティングスター。下がってちょうだい。撤退よ」
空にいるシューティングスターとロリっ娘も下がらせる。
お城を出たら桟橋に上がり、いただいた魔力を使って、仕掛けていた要石に聖浄の魔法を発動させた。
ちゃんとわたしの命令に従ってくれたようで、騎士団の方々が速やかに撤退してくれているようだ。
「あそこを見ろ」
だからアゴを蹴らないでくださいって。痛いんですよ。
「あの骸骨、倒されなかったか。しぶといわね」
城壁の上に骸骨マンがマントを靡かせてわたしを睨んでいた。
「痛み分け、ね。次は勝たせてもらうわよ」
わたしの声が聞こえたのか、なにか鼻を鳴らしたように見えた。
にっこり笑って見せると、その場から去ってしまった。気に障りました?
「──チェレミー嬢!」
ラインフォード様とハーベルク様がこちらに駆けて来た。
激戦だったのでしょう。鎧にたくさんの傷がついていた。強化付与を施したというのに。
「怪我人がいたら下がらせてください。体力がある騎士様は警戒を。第一戦は引き分けです。第二戦に備えてください」
わたしも聖衣を翻し、湖畔に向かって歩き出した。
ハァー。予想外のことばかりだわ……。




