1061 *ラインフォード* 下
急いで自分の陣に駆け戻り、部下たちを湖岸沿いに配置した。
「妃候補者たちの護衛は?」
チェレミー嬢から護衛は不要と言われているが、さすがにそれはできないので、両騎士団から十人ずつ配置させた。指揮はミランダルクの者に任せたので報告は部下任せにしていたのだ。
「天幕周辺に配置しております」
ならよし。任せた者には悪いが、未来の妃を護衛した名誉は必ず陛下に伝えてやる。それで許してくれ。
「団長。戦いが始まりました」
それほど距離が離れているわけではないが、チェレミー嬢も骸骨も魔法戦をしている。いや、チェレミー嬢が軽くいなしている感じだ。付与魔法だけであれだけのことができるものなのか?
「団長、加勢しますか?」
「いや、まだだ。まだ前哨戦でしかない慌てるな」
そうでなければ我々に声をかける必要もない。それ以上のことが起こるということだ。是非、そうであってくれ!
「……チェレミー嬢、あんなに強かったのですね……」
「そうだな。だが、慣れているわけではない。敵の強さを予想して、あらかじめ用意していたのだろうな」
ここしばらく魔力を溜めるために集中していた。敵を予想し、対抗策をいくつか用意していた、ってことだろう。チェレミー嬢の戦い方だ。
「チェレミー嬢のほうが一つも二つも上手だな」
おそらく今は、敵の力を見極めているのだろう。その魔法はおれたちが持つグリムワールに反映される。まずは自分が受けて、こちらに対抗策を与える。まったく、女性にしておくのが惜しいお方だ。
「ラインフォード様、来ます」
チェレミー嬢の声が届き、湖面が沸騰さしたかのよに泡立ち始めた。
「抜剣! 我らの出番ぞ!」
泡立ちは徐々に激しくなり、波が高くなった。これは不味いか? と思ったら、湖岸沿いに光の壁が出現。覆い被さるほどの波を跳ね返した。
……こんなのも仕掛けていたのか。どこまで先を見ているんだ……?
「団長、あれ! なにか巨大なものが出て来ました!」
し、城か? なぜ湖に? 意味がわからなすぎる!
「落ち着け! チェレミー嬢はこれも読んでいたから仕掛けをしていたのだ!」
団長であるおれが慌ててどうする。チェレミー嬢は今も最前線に立っているのだぞ。我ら騎士が狼狽えてどうするというのだ。
波は未だに高い。それだけあの城が大きいのだろう。
「大軍が出て来そうだな」
部下たちの動揺も消え、高揚に変わっていた。
「ああ。マルビオでのことを思い出す。あれはこの日のためだったんだな」
全力を出して敵を倒す。あれがなければおれたちも本気を出すということを知らなかっただろう。
「命を粗末にするな! 連携しろ! 怪我をしたならすぐに下がって回復しろ! 帰るまでが戦いだと知れ!」
おれたちが膝をつくときはチェレミー嬢に勝利を伝えるときだけだ。




