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1.78 オルド

 そのオ何とかいうドワーフが住んでいるという酒造所は町の真ん中の広場を左に折れた町はずれにありました。他の建物とは少し離れたぽつんと一軒家に背の高い町の外壁が影を落としています。

 古い木の扉をノックして声を掛けてみます。


「ごめんくださーい」


 ……。

 しばらく待ってみたのですが返事がなかったので勝手に入りました。


 キィ……。

 蝶番のきしむ扉を開けると薄暗い醸造所はアルコールと麦芽が醸し出す甘い香りに満たされていました。この辺りでは民家にガラス窓を使うなどという贅沢はあり得ません。この建物にももちろんそんなものはありません。天窓がひとつ鎧戸を開け放たれて暗い天井の真ん中に空を切り取っていました。

 その天窓から落ちた光の中に一人の男が立っています。背の低い、白髪の、髭面の、赤ら顔の丸顔の、縦と横の太さが同じくらいもありそうなほどがっしりとした体形の老人が、腰に下げた剣に手をかけています。

 ドワーフです。


「誰だ!」

 鋭い誰何の声が薄暗がりを裂いて飛びました。何を白々しい、暗い坑道の中で作業をするドワーフも種族的に暗視魔法を使えるはずですので、こちらの姿は見えているでしょう。

「ボクです」

「いや、だから誰だ」

「フフフ……ボクが誰かと尋ねたら──花のかんばせしだり耳、瑠璃の瞳に絹の肌、金に真珠の胡粉を刷いて玻璃に透かした髪長き、天上天下に比類なきオーマの森のリンスとは──このボクのことです!」

「自己紹介ご苦労だがやはりエルフよ。アポイントメントなしとは常識というものがないようだな」

「お前ろくに人付き合いもしないのにアポの取りようがないじゃないですか」

「む……。とはいえ不法侵入とはやはり無法者だ。自警団を呼ぶぞ」

「居留守を使っといて言えた義理ですか。呼んだ時にちゃんと返事してくださいよ」

「むむ……黙れ腐れマ〇コめ。見てくれは花のようでも股の奥から漂う腐った臭いは隠せんぞ」

「花の姿で腐った魚の臭いって、なんですか人をラフレシアみたいに。確かめもしないで賞味期限切らした汚マ〇コ呼ばわりするとは失礼な童貞ですね! もっとも、お前のフニャチンじゃエルフのキツマンは確かめられないかもしれないですけど」

「ワシはノンケだが、たとえ若くてもエルフじゃ勃たんわい!」

「奇遇ですね、ボクもドワーフはノーサンキューです!」

「「フン!」」

 お互いそっぽを向きました。


「……まあいいです。別にお前と一発ハメに来たわけじゃありませんからね」

「なら何をしに来た。……いや言わんでいい、とっとと帰れ」

「言われなくても用が済んだら帰ります。お前が造っているのでしょう? 極上の酒を」

「むむ……。造っとるがエルフに飲ませる酒はないわい!」

「飲ませる飲ませないを決めるのはお前じゃありません、ボクです。お前の酒はリノスで一番だと聞きました」

「ふむ……誰に聞いたか知らんが、確かにワシの酒はこの国でも指折りの出来と自負しておる」

「では本当に一番かエルフの舌で確かめてやりますからとっとと出すですファッキンインポドワーフ。それともエルフに批評されるのは怖いですか? ん? 逃げますか? でしたら今後はお前の股間にぶら下げてる道具をコックではなくチキンと呼ぶことですね」

「……エルフにしては言うじゃないか。フン、エルフの挑戦から逃げるわけにはいかん。我が生涯の求道の成果、心して飲むがいい」

この世界のエルフは大きく分けて森のエルフと町のエルフの2種類がいます。

森のエルフの耳は細長く薄く、耳を支える軟骨が弱くて耳の先が水平よりも少し下に下がっています。

町のエルフの耳は比べると厚くて幅が広くて短く、耳の先は水平よりも少し上にあります。

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