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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第三章 王の首
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100マス目 裸足の騎士


 先に仕掛けたのはロネット。

 真っすぐ飛び込み、硬化した右腕を振り上げる。

 エリザベートは二本のティースプーンを取り出し傘にする。

 二本の傘を十字にクロスさせ、ロネットの鉄拳を防ぎきる。


「折れない……だと!?」


 ロネットの攻撃で、エリザベートの足は石造りの屋根にめり込む。

 だが傘は折れるどころか軽くしなるだけ。

 その事実にロネットは目を見開き、一瞬動きが鈍る。


「隙だらけですわ」


 右の傘を逆手に持ち、エリザベートは回転するように傘を叩き付けつつ飛び上がる。

 そしてロネットの頭めがけて、二本の傘を同時に振り下ろした。


「っがあ!」


 傘とは思えぬ衝撃に、ロネットの膝が落ちる。

 エリザベートはガードが落ちたみぞおちに傘の先を深く突き立てた。

 だが、……刺さらない。

 硬化したロネットの腹は、並みの鎧をはるかに凌駕する。

 その圧倒的硬度は、攻撃したエリザベートの腕を痺れさせた。


「うっ……しまっ!!」


 傘が掴まれた。

 そのままエリザベートの体ごと足元に叩き付けられる。

 だが、叩き付けられた場所にエリザベートの姿は無い。

 ロネットは即座に全身を硬化させる。

 すると、ロネットの背中から金属音が響いた。


「……困りましたわね」


 背後に回りこんでいたエリザベートは苦笑いを浮かべた。

 今の攻撃で二本の刃が折れてしまったのだ。


「そこか!」


 ロネットの振り向きざまに放つ右拳は、エリザベートの足元を打ち砕く。

 今の一撃で、足場にしていた屋根には大穴が開いた。

 しかし、エリザベートは素早く身をかわし落下を防ぐ。

 今のでお互いに10メートルほどの距離が開いたが、

エリザベートにはもう武器が無い。

 ロネット相手に肉弾戦はあまりにも無茶だ。


「今なら見逃そう、……去れ」


 ロネットがエリザベートにチャンスを与えた。

 いや、これはロネットも焦っているのだ。

 ヴァーデが死んだという誤情報を与えられ、一刻も早く確認したいはず。

 けれども、エリザベートの表情からは、一切引く気は見受けられない。


「それは、わたくしを騎士と知らずに言いましたの?」


 エリザベートが一歩詰め寄った。

 目を血走る程見開き、

遠くから見守る兵士たちに音が伝わりそうなほど強く、拳を握りしめている。


 珍しくエリザベートが本気でキレていた。


「見逃す……、そう言いましたわね。

騎士にとってこの言葉は、殺す価値も無いと宣言されるも同義。

発言撤回の余地を与えますわ」


 エリザベートは折れた剣の持ち手を投げ捨て、三本指を立てた手を突き出す。


「三つ数えるうちに発言を取り消しなさい。

…………一つ」


 エリザベートは指を一つ折る。

 まだロネットに動きは無く、口を開く様子もない。

 

「…………二つ」


 エリザベートが二つ目の指を折る。

 ロネットはゆっくりと迎撃の為に構えを整える。


「…………三つ。

残念ですわね」


 エリザベートは最後の指を折ると、おもむろに靴を脱いだ。

 少し踵が上がった靴の底を外す。

 外された靴底から出て来たのは、短い棒のような物。

 二本の棒を上下に組み合わせ、一本の棒にする。

 それを一瞬で傘に変えると、エリザベートは一気に剣を引き抜く。


「……来い」


 ロネットは目を見開き、迎撃態勢に入る。

 そこへエリザベートは、無謀にも真正面から歩いて行く。


「来いだなんて、笑わせますわね」


 エリザベートは細剣に付着した血を振り払う。


「もう斬りましたわ」


「なに…………っなんだと!!?」


 ……いつの間にか攻撃していたのだ。

 ロネットの肩を。

 痛みすら与えない超高速の斬撃に、ロネットは傷口を押さえ冷や汗を流す。


「おのれ!!」


 ロネットは渾身の蹴りと共に、勢いよく自らの靴を飛ばす。

 大砲のように風切り音を響かせる、ロネット唯一の遠距離攻撃。

 だが、靴は空中で真っ二つに斬り裂かれ、エリザベートの横をすり抜ける。

 エリザベートはいまだゆったりとした歩調で歩みを進める。

 ロネットは大きく息を吐き出すと、荒々しく上着を脱ぎ捨てた。


「……ならば、甲拳流・古龍術の真髄を見よ!!」


 深く腰を落とし、一撃に魔力を込めるロネット。

 それでもエリザベートは歩みを止めようとしない。

 そしてとうとう、エリザベートがお互いの射程圏内に入り込む。


「龍景覇軍(りゅうけいはぐん)・鉄華(てっか)……っがぁ!?」


 一瞬の斬舞。

 刃が降られた瞬間を見た者はいない。

 ただロネットの腹から流れ出る鮮血と、遅れて響く斬撃の音。

 攻撃を放つ一瞬の隙を突かれたロネットに、反撃する余裕はなかった。


「ぐっ!」


 ロネットは全身を硬化させる。

 それはもはや、防御と言う名の逃げだった。

 しかし、それが決定的な敗因となる。


「……間抜けすぎますわよ、とっても」


 エリザベートは剣の先を、ロネットの首筋に当てる。

 

「チェックメイトですわ」


 もし硬化を解いたら、その瞬間ロネットの喉は貫かれる。

 わずかにでも怖気づいてしまったロネットの、完全敗北だった。


祝 100話!


これからもよろしくお願い致します

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