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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第三章 王の首
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101マス目 エリザベートの弱点


 エリザベートの尽力により、街の混乱は収まった。

 ロネットはエリザベートが動きを止めている間に拘束、連行された。

 すぐに街の修繕が行われ、非難した住民は皆元気な顔を見せる。

 さらに、近くに開いた大穴から地下街が発見され、

数百を超える大勢の行方不明者の発見、ネストとヴァーデの逃走などなど。

 翌日の新聞が楽しみなレベルの大ニュースが、国民を騒然とさせていた。

 そんな街中を一台の馬車が駆ける。

 手配取り消しの為、俺とエリザベートは共に城へ向かっていた。

 

「しかしさすがだな。

あんな簡単にロネットの奴を倒すなんて」


「あの男が間抜けなだけですわ」


 そう言いながら得意げな顔をするエリザベートは、いつも通りに見える。

 だがさっきの戦いぶりは、何だかいつもと違って見えた。


「……なあ、さっきのアレどうやったんだ?

ただでさえお前らの戦いは見えないってのに、

あれはほかの兵士にも見えてなかったぞ」


「それはそうですわ。

あれは揺り足という特殊な移動術ですの」


「揺り足?」


「ええ、お母様の編み出した瞬足の移動術。

振り子のような予備動作から、その名が付けられましたのよ」


 俺には早すぎて予備動作すら見えなかったけどな。

 

「だったらもっと早く使っても良かったんじゃないか?

あれで斬りまくれば誰にだって勝てるだろ」


 俺の深く考えてない発言に、エリザベートはふるふると首を横に振り、

ゆっくりと靴を脱いだ。


「うわっ……」


 綺麗な攻撃方法とは裏腹に、揺り足の代償は痛々しく残っていた。

 親指の爪は剥がれ、足の所々が内出血を起こしている。


「お母様はどんなに揺り足をしても、足の皮一つ剥けませんでしたけど。

わたくしのような未熟者が使うとこうなりますわ」


 未熟者の基準が高すぎて、俺にはどう反応していいかわからん。

 そんなことより、女の子の足がこんな風になっているのに、

そのままというのは何だか気が引ける。

 

「あ、靴履くのはちょっと待ってくれ」


 血が滲む足先を靴に入れかけたエリザベートにストップをかけた。


「なんですのよ。

わたくしもこんな足、ジロジロ見られて嬉しいものではないですわよ」


「いいから、こっちに向けろ」


 俺は差し出された足を膝に乗せる。

 皮がめくれた傷口に絆創膏を貼りつけるが、俺の持ってるのじゃ足りないな。


「そうだ、これで……」


 俺はハンカチを破って包帯替わりに巻き付ける。

 何分こんなのは小説やら漫画やらでしか見たことが無いので、

さすがに綺麗には仕上がらなかったが、まあ形にはなった。


「あ、……ありがとうございますわ」


「どういたしまして、っと。

ほれ出来た。

これなら少しはマシだろ」


「でもちょっと不格好ですわね」


「仕方ないだろ、初めてやったんだから」


 そう言いながらも、何だか楽しかった。

 今回はエリザベートの屋敷にもちゃんと泊まれなかったし、

こうやってゆっくりするのは久々な気がする。

 実際はそう何日も経ってないけれど。


「あ、そういや言い忘れてた。

先に寄ってもらいたい場所があるんだけど、

大丈夫か?」


「構いませんけど……、どちらに?」


「時計塔の方だ」








「本当にこんな場所に人がいますの?」


 エリザベートは何もない空き地を見渡して、口を尖らせた。

 とはいえ、俺もフィズが戻ってきているかはわからない。

 あいつの事だから、ロネットからは上手く逃げてくれただろう。

 逃げ切った後に帰って来てくれてればいいんだけど。


「おーい、居るか?」


 取りあえず、軽く声をかけてみる。

 すると「はいは~い」と、気の抜けるような声で返事が返って来た。


「な、何も無い場所から声!?」


 エリザベートが驚きつつ左右に視線を動かす。

 すると、空中からひょっこりとフィズが顔をのぞかせた。

 まあ単に見えない建物の玄関から顔を出しただけだが。


「おお、無事だったかい。

あのムキムキ男、俺たちを見失ったと思ったら、

物凄い形相であんたを追ってったからさぁ。

ちょっと心配だったんだよね」


 そんな光景絶対見たくない。

 あいつのキレた顔かなり怖いからなぁ。

 

「……んで、あの人だれ?

あ、彼女かい!?」


「何でだよ、エリザベートはそんなんじゃ……。

エリザベート!?」


 振り返った先でエリザベートは、こっちに背を向け、頭を抱えて丸まっている。

 その背中は小刻みに震えていた。


「あれぇ? もしかして俺脅かしちゃったかい?」


 確かにいきなり人の生首が出て来たら誰だってビビる。

 それにしたって、あの程度でエリザベートがここまで!?

 ……もしかしてエリザベートってオバケ系ダメな人?


「エリザ姉ちゃん!?」


 フィズの真下から、同じようにひょっこり顔を出すフラウト。

 

「ふ、フラウ……ひっ」


 振り返ったエリザベートは顔を青白くして固まった。

 フラウト、今そのタイミングで顔を出すのは不味かった。


「いやああああああぁぁぁぁぁぁああぁあっぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」


 足の怪我を感じさせないダイナミックな逃げ足。

 あの反応、……ガチのマジだ。

 シランのお化け騒動に関わらせなくて良かったかもしれない。

 結局、落ち着きを取り戻したエリザベートが帰ってくるのは、

それから30分後の事だった。


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