第十八話
俺たちが大きく飛翔する段階がようやく来た。
地理的に侵攻の要となる筑後は蒲池の婿殿に任せ、後藤を継いだ三男を
後詰の大将として入れ置いた。近くに福地長門と田尻丹後を置き適宜
動かせるようにしておく。
肥後は納富能登、鍋島豊前、隈部刑部・式部親子と阿蘇らで席巻。
鍋島豊前と隈部刑部には薩摩を窺わせ、納富能登と阿蘇は日向へ差向けた。
そして、肥後の龍造寺本隊を率いるのは俺の長男である。長男は今回の
出征を前に大友からの脱却を示すべく、肥前守政家と改名している。
長男は肥後全体と近隣の情勢とを見ながら隈部刑部と共に分国化を進めている。
大友に与していても、降るのが戦端を開く前であれば本領安堵。
後であれば所領召上げだ。もっとも、今ならば家名存続は許すし
働き次第で新恩もあると周知させた。
そして彼らからは当主に近しい一族から人質を供出するよう命じた。
薩摩国内にいる島津修理とは常に音信を取り、準備を怠らない様伝えてある。
俺は筑後を経由して筑前に向け出陣した。更に北肥前から神代が、西肥前からは
松浦水軍が出陣。
今の筑前で明確に大友と標榜しているのは、大友重臣の高橋が有する宝満山城と
岩屋城、そして同じく重臣の戸次が有する立花山城だけである。これらが健在で
いる限り筑前平定はなるまい。とりあえず兵力に物を言わせて囲み降伏勧告
をさせる。
簡単に落ちることはないと思うので、一手を組織して博多目指して進軍させる。
これの大将は兵庫改め七郎左衛門に任せた。
毛利もまた博多を狙ってくることは明白であるし、大友の援兵が来る可能性もある
ので更に一手を組織、小河武蔵を大将に筑前・筑後・豊前の境目へ派遣し、それら
を排除させることとした。
今のところ龍造寺は版図内に長崎・平戸・唐津といった優良な港を有している。
これに博多を加えれば、経済効果は莫大なものとなるだろう。また長崎と違い、
教会の影響が少ない地であることも高ポイントである。
商人の力が強いのが面倒と言えば面倒だが、それは仕方がないな。
北肥前から討ち入った神代は二男が継いで大将となっており、降った原田らと陸路
で博多を目指して進軍。七郎左衛門とどっちが先かな、と煽っておいた。
松浦水軍を率いるのは安房の二男で、海路博多を目指している。こちらは水軍で
あるので博多の海上を支配させ、壱岐など周辺島域にも進出するよう求めている。
筑前・豊前では大友、毛利と。薩摩・日向では島津と近い内にぶつかることは
想定内だ。
多面作戦となっているが、地味に国力を高め兵力を集めておいたから問題はない。
肥後には当初から隈部と阿蘇という協力者がおり、相良も協調して動いている。
薩摩にも手を伸ばし、島津修理と音信を交わしている。
筑前の諸将も次々とこちらに降ってきている。力を誇示した結果であるのは間違い
ないが、武力制圧を最小限にし兵力の温存も出来ている筈だ。
立花山城は弟の和泉に囲ませ、宝満山城は鍋島飛騨に囲ませている。岩屋城は筑紫
が落としてしまったらしいのでそのまま守らせた。
俺は小田の婿殿を近くに置いて、両城を囲む軍勢の後詰としてやや南部に陣取った。
佐嘉には安房に鍋島駿河と納富但馬を添えて置いて守らせている。
しかし、大友が教会を使って長崎に仕掛けてくる可能性が捨てきれないのが痛い。
せっかく総力戦なのに、下総守や鍋島丹波を南肥前に据え置かねばならなかった。
龍造寺水軍の主な運用は深堀に任せ、鍋島丹波と共に適宜、肥後と長崎・佐嘉との連絡に使っている。
今回の第一目標は肥後を制し、博多を得ること。これは既に達成目前だ。
問題の第二目標は筑前を制し豊前に侵攻、毛利と大友の勢力を一掃することだ。
第二目標最大の難点は、今俺の目の前に鎮座している大友重臣の高橋と戸次だろう。出来れば俺に降って欲しいが、恐らく無理だろう。それこそ蒲池さんのように死んでも大友に義理立てして拒絶、とかされかねない。
天下が動くその前に、九州北部は確実に平定してしまいたい。
俺たちは総力戦で臨むのだった。




