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種と不死者と少女の物語  作者: 狸森
1章 神種の運び手
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33話「強くて優しいお父さんと綺麗で優しいお姉ちゃん 後編」

「リエラ!配置は進んでるか?!」

『はいお父様!1番アインスは北門、2番ツヴァイは東門、4番フィーアは西門へ配置完了しました!護衛の方々が到着するまでは持ちこたえさせます!』


ライオネルの呼びかけに、嘴の王獣グリフォン型の壁の魔像ウォールゴーレム6番ゼクスからリエラの音声が流れる。


北東、北西、南東、南西に配置した4体の壁の魔像ウォールゴーレムからの反応が消失したため、それらを触媒に使った巨大な障壁魔法《大障壁グレイトウォール》の発動が出来なくなったのだ。

本来の作戦では《大障壁グレイトウォール》発動後、障壁内部に隔離された魔人間デモ・ヒューマンを殲滅後に再び浄化結界を張り直した後、障壁外の魔人間デモ・ヒューマンを撃破する予定であった。


だが、《大障壁グレイトウォール》発動位置にいた4体の壁の魔像ウォールゴーレムが消えた他、急速な禍地化まがちかから魔人間デモ・ヒューマン達が逃げて来たのだと解った今、無益な殺し合いをする必要も無くなり、作戦そのものを変えなければいけなくなった。


魔人間デモ・ヒューマン達が無理に浄化結界をこじ開けなければここまで酷い状態にならなかったとはいえ、そうさせてしまったのは彼らを忌避してきた自分たちにあるという自覚もあり、南門を開いて逃げて来た魔人間デモ・ヒューマン達の受け入れを始めたのだった。


とは言え、禍地まがちから湧き出る瘴気と、それに呼び込まれた魔物。

そして、逃げ遅れて魔物化してしまった大量の魔人間デモ・ヒューマンを駆除しなければ、リムリオから危機が去ったとは言えない。


そこでライオネルは、残った壁の魔像ウォールゴーレム4体を触媒とする《大障壁グレイトウォール》を発動させる事を決めたのだ。

だが東西南北に配置させた後、《大障壁グレイトウォール》発動までは壁の魔像ウォールゴーレムを一切動かせなくなる。

護衛の衛士や冒険者が到着するまでは、リエラが一人で各壁の魔像ウォールゴーレムを動かし対処する必要があった。


西門へはレインとA級冒険者のグループが。

東門へは農業ギルドと土木ギルドの混成グループが。

最も遠い北門へは、配置の早い衛士ギルドが。


そして、禍地化まがちかしてしまった南門付近は魔人間デモ・ヒューマンの生き残り達とライオネルが担当することになった。


「そういえば、逃げ込んでくるのはゴブリンとオークとバグベアだけだな。食人鬼オーガやら醜鬼トロルやらはどうした?」


ふと思った疑問を、横にいたオークの長に訊ねる。


「アイツ等ハ元々、瘴気デ無理矢理ニ変質サセラレタ我ラト違イ、《ネガ》ノ浸食ヲ自ラ受ケ入レタ者達。禍地化マガチカデ真ッ先ニ影響ヲ受ケテ裏切リ、後方ニ控エテイタ同胞達ヲ皆殺シニシタ。」

「そうだったのか。ならまともなのはここに居る奴らだけか?」

「ソウダ。」


戦いで死ぬのは魔人間デモ・ヒューマンの誉れだ。

だが味方と思っていた者に背後から殺された同胞を思い、目を伏せるオークの長。

ライオネルはそんな彼の肩に、慰めるようにぽんぽんと2回叩いた。


「わかってるぜ。俺も戦いの中に身を置いてきた鬼人おに族の男だ。戦いで死ぬのはまだしも、裏切りで殺されるなんてのはさぞや無念だっただろう。一戦交えたから分かるが、お前らは誇り高い者達だ!なんせ俺が倒した者達は皆、逃げ出そうとなどしなかったからな!」

「ソウカ。ワカッテクレルカ。鬼ノ勇者ヨ。」

「よせやい、俺はそんなんじゃねぇよ!ただの親バカの守護者だ!」


そう言って《番人の鋼ヴェヒターシュタール》を肩に担ぎ、再び戦場へと戻って行った。




潰し、砕き、斬り裂く。


動く死体ゾンビ達を蹴散らしながら、ライオネルは家族を想った。




――――――――――――――――――――――――――――――



「お父さん、無茶してないといいけど・・・」


窓の外のどんよりとした空を見上げ、リーヤは呟いた。


「リーヤちゃんは本当にお父さんが大好きなんだね~」

「うんっ。もし結婚するならお父さんみたいな人がいいなぁ・・・」


それは趣味としてどうなんだろう?と春はふと思ったが、自分の好みも父基準なのを思い出してそっと心に仕舞った。

脳裏ではガハハと肩を組んで笑い合う五十鈴家の父とライオネルの姿が浮かんだ。


「あ~・・・なんかライオネルさん、うちのお父さんと気が合いそうな気がする・・・」

「へぇ!そうなんだ!会ってみたいなぁ。」


胸の前で手を組んで、ぱぁっと笑顔を咲かせるリーヤ。


「そうだね~、それが出来たらいいんだけどなぁ。・・・でもうちって姉妹居ないから、少しリーヤちゃんが羨ましいかなぁ」

「えへへっ。うちのお姉ちゃんすごく素敵だから、実は自慢なんですよ~っ」

「そうだよねぇ~」


父と姉の話題に、リーヤはにこにこと答える。


「早くこの戦いが終わって、また4人で過ごせたらいいのになぁ・・・」


そう言って、再び窓の外を見上げたのだった。



――――――――――――――――――――――――――――――



6番ゼクスの配置位置へ移動したライオネル達に襲い掛かってきたのは、《野鬼の骸オーク・ナス》と理性を失った《食人鬼オーガ》の集団だった。


「ここを死守するぞ!踏ん張れ!」


大障壁グレイトウォール》発動の為に、待機状態に移行した6番ゼクスをオークやゴブリン達と共にぐるりと囲み防衛線を張り、それに殺到する魔物達を押し止める。


「リエラァ!あとどのぐらいかかる?!」

『今、《大障壁グレイトウォール》の起動キーを差し直しました!約100カウント程で発動します!』

「よっしゃぁ!怪我した奴は下がれ!たったの100カウントだ!気合い入れろぉ!」


食人鬼オーガの振り回す棍棒に吹き飛ばされてきたゴブリンを左手でキャッチしながら、ライオネルの怒号が響く。

怪我人は出ているものの、ライオネルの奮闘で今の所死人は出ていない。

腰に付けたテレパスから流れる北門、西門、東門からの報告も、大きな混乱は起きてない様だ。

このまま《大障壁グレイトウォール》発動まで時間を稼げれば一息付ける。


そう思った矢先、上空を飛び交っていた魂呼鴉スピリットクロウが渦巻くように舞い始めた。

黒い羽根が舞い、その中心部に蠢く何かが凝縮しその姿を形成していく。


「ナ、ナンダ!?」

「ゲギョ!ヤバイヤツガクルゾ!」


魂呼鴉の異変に気付いた魔人間デモ・ヒューマン達が、口々に警告を発し始める。



――に゛ゅるり、ぼとん



渦巻く魂呼鴉スピリットクロウの群れの中心から落ちて来たのは、黒く巨大な蛇だった。


「――!こいつはぁ!」


ぬらつく黒い鱗を凝視しながら、口から唾を飛ばしてライオネルは叫んだ。



――《暴蛇ウムガルナ



かつてライオネルの母を殺し、おそらく父も殺されたであろう魔物に、ライオネルは再び出会った。


怒りの形相で暴蛇ウムガルナを睨み付けていたライオネルだったが、ふと目を閉じると突如大声で笑いだした。


「ぐはははは!まさか!今!ここで!お前に遭うとはな!父と母の仇を討つために散々探し回って見つからなかったが、天は粋な計らいをしてくれるものだ!」


ゆっくりと鎌首をもたげ、耳障りな大声を張り上げるライオネルをギョロっと睨んだ暴蛇ウムガルナは、とぐろを巻いて尾の先端をしゅるしゅると鳴らし威嚇を始める。


「さあ!村の皆の恨みを晴らしてくれるぞ!覚悟しやがれぇぇぇぁぁぁ!!!」

『お父様いけません!もうすぐ《大障壁グレイトウォール》が!――あぁ!』


暴蛇ウムガルナへ向かって突撃を開始したライオネルの背後で、金色の壁が生成され始める。


『お父様!戻って来て下さい!お父様!』

『ライオネル!おい!』

『戻れ!ライオネル!』

「「「大将オォォォ~!!」」」


リエラと魔人間デモ・ヒューマン達、そしてテレホンからのレインやエバンスの制止の声が響く。

しかし、もはやライオネルには届かず、発動に巻き込まれた魔物達を消滅させながら《大障壁グレイトウォール》が展開された。


『お父様・・・お父様ぁ~~~!!!』


魔力マナを使い果たし動けなくなった6番ゼクスからは、泣きじゃくるリエラの父を呼ぶ声だけが響いていたのだった。






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