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種と不死者と少女の物語  作者: 狸森
1章 神種の運び手
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11話「聖女と聖剣」

シェルとセレスが出会ってから7年が経過した。


あの後シェルとセレスはオジーの要請に応え《聖都エフェルハイム》へ向かった。

プレト村からエフェルハイムへ移ったセレスは、オジーに連れられエフェルハイム王と謁見することになる。

その場で王より神託の話を聞かされ、その後の詳しい精査によりセレスは《精霊の種》を宿していることがわかり、《神種の聖女》として広く認知されることになった。

《聖女》となったセレスは災いのあった各地へ赴き数々の『奇跡』で災いの浄化をしていくことになる。

そしてシェルの処遇はセレス付きの護衛と言うことになり、元アインブルグ兵という点は不問にされた。


引き連れた数千の意志ある《骨》達はかなり混乱はあったものの受け入れられ、連合軍へ編入されることになる。

驚いたことに、元はアインブルグの兵であった《骨》達もなんの抵抗もなく、むしろ喜んで連合軍に入っていた。


――《聖鴉ホーリークロウ》の浄化と聖女様の御力に触れた為に邪な心から解放されたんじゃろ。


とはオジーの談である。

実際《骨》達は言葉は発せないものの陽気な者が多く、また《聖女》の奇跡で蘇った者たちだと広まると連合軍兵士や住民から当初あった忌避感も薄れていた。

《骨》たちは新しい種族《骨人スケルトン》として受け入れられたのであった。



一時撤退していたアインブルグ軍は《凶王ヴァーン》により再編成をされ、新たに《五災禍フィフス》として活動を再開していた。

凶王ヴァーンの指示で長期間《瘴気》を浴びせ続けられた兵士たちはその身を変質させ、《魔人間デモ・ヒューマン》と呼ばれるオークやゴブリンと成り果てていた。


骨人スケルトン》達を含めた新生連合軍と凶王ヴァーン率いる《五災禍フィフス》軍の戦いは一進一退を繰り返しながら戦い続けていた。

中でも『アマルガン奪還戦』と呼ばれた戦いは熾烈を極め、双方に多大な犠牲を払いながら辛くも連合軍の勝利に終わり、《五災禍フィフス》はアインベルグ領まで撤退を余儀なくされた。

その戦いで特に目立った働きを見せたのが、シェルの所属していたフェンリル部隊長で現在骨人スケルトンの剣士、ライン・ユンゲルスであった。

彼はその働きにより《剛剣》の二つ名と《骨人スケルトン》初の将軍に抜擢されることになる。



一方、セレスによる浄化の作業は順調に進み、戦闘中であったアマルガン地域を除きほとんどを終えていた。

オジーの指導とその適正により、セレスの浄化結界の範囲はエフェルハイム国全域を覆えるまでになっていた。

しかし土地の浄化が終わるまで増え続けていた魔獣は駆除が間に合わないほどに数が増えており、その対抗措置として挙がったのが重要都市を城壁で囲む『城塞都市計画』であった。

これは魔獣の被害を防ぐ他にも《五災禍フィフス》の侵攻を抑える意味合いもあり、魔獣被害の大きいエリディアと奪還したばかりのアマルガンから城壁の建設が始まった。




そしてその事件はアマルガン奪還を祝う式典で起きた。



式典会場である王の間ではオジーとシェルが並んで立っていた。


「オジー・・・あんた礼服が似合わないな・・・」

「お前にだけは言われとうないわい、シェル。」


齢3000年を生きたオジーは《森人エルフ》でも珍しく老人と呼べる姿であった。

普段のローブ姿を見慣れているせいか、礼服を着たオジーはどこか怪しい雰囲気に思えたのだ。

そのシェルにしても礼服を着るのはこれが初めてであり、着せられている感が酷い。


「まあ、俺らはまだいいよ。見ろよユンゲルス隊長を・・・。緊張でさっきからカタカタ言ってるぜ。」

「ああ・・・王から直々に勲章授与じゃからのぉ。しかも宝物殿で埃をかぶっとった《聖剣アレクサンデル》も二つ名と共に拝借されるからの。そら緊張もするじゃろうて」

「その《聖剣アレクサンデル》ってどんなもんなんだ?」

「建国の英雄アレクサンデル・エフェルハイムが崩御した際に《聖剣化》した物と伝えられているのぉ。魔獣や魔物を倒した際に稀に《魔剣化》するじゃろ。あれと似たようなものらしい。」

「ほぉ~」


ついこの間将軍になったばかりのユンゲルスは勲章授与者の最前列に座り、緊張でカタカタ骨を鳴らしていた。

彼もまた式典用の立派な鎧を着せられている。

すると今までざわざわと歓談をしていた貴族たちがさらに大きくどよめいた。

もう一人の主役《神種の聖女セレスティーヌ》の登場である。


シェルが出会った当初は煤けていた長い黒髪も今は艶やかになって腰のあたりで切りそろえてある。

空色のを基調にし長い青いリボンを腰から垂らしたドレスを着て、髪には碧水晶と聖銀の髪飾りが淡い光を放っていた。

巨匠の絵画ともビスクドールとも見えるその可憐な出で立ちは、貴族達や来賓も男女を問わずに溜息と共に見惚れていた。

その反応に気恥ずかしかったのが少し俯き加減に歩いていたセレスだが、会場の隅にシェルの姿を見つけるとぱぁっと笑顔が花開きどこかうきうきとしながら自分の席へ向かって行った。


「・・・城の侍女達がえらく気合い入れてると思っていたが、こういう事じゃったか。」

「力入れすぎじゃないですかね?・・・」

「それよりもお主。今の聖女様の反応を見て何か思うところは無いのか?」

「・・・何の事でしょう?」

「しらばっくれても無駄じゃ。あれだけお主への気持ちをダダ漏れにしていて気づかないほど朴念仁でもないじゃろ?お主とて悪く思っている訳でもあるまい?聖女様ももう16才じゃ。その恋路を邪魔する者はだれもおらんと思うがの?」

「・・・俺ではセレスと釣り合いが取れませんよ。」

「まったく・・・こういうのを何といったかの?そうそう、『ヘタレ』じゃな。」


実はシェルは城の侍女や町娘達からは聖女付きの護衛で銀髪の背が高い剣士と言うことで何気に人気が高かった。

それでも浮いた話の一つもないのはもっとも身近に聖女セレスが居るため、シェルに言い寄りたい女達にとっては途轍もない壁がそびえ立っていたからである。

無論、シェルもセレスの気持ちには気づいていた。

だが、この戦争が終わるまではとはっきりとした答えを出す事に躊躇していたのである。


その躊躇が後にシェルの後悔を生む事になるとは知らずに。



式典は滞りなく進んでいた。

が、王からユンゲルスへ《聖剣アレクサンデル》が授けられた所からシェルの記憶が途切れがちになる。



セレスの前に現れた《黒いもや》。


伸ばした右腕。


弾け飛び肉塊を撒き散らす貴族や近衛兵。


そして・・・







「ヒャーッハッハァ!ワタクシの名は《狂信のヴィヒデット》おぉ!!愛しい愛しいヴァーン様ぁ!《種》はワタクシがアナタ様の元へぇ!!小虫どもは潰れろ!潰れろぉ!アヒャヒャヒャヒャ!」



薄れる意識の中シェルが目にしたのは、嗤う狂人の腕に胸を貫かれて血を流すセレスの姿だった。


そして意識が途切れる。











「――死なないで・・・おにいちゃん・・・」






ふとセレスのか細い声が聞こえてうっすらと目を開けた。



セレスは、シェルの無くなった腕を胸に抱き息絶えていた。


するとセレスの身体は金色に輝く光の粒子に包まれていき弾けた。


光が治まるとそこには、


一振りの《剣》が落ちており、シェルの無くなったはずの右腕は金色に輝きながら生えていた。








こうしてシェルは《聖剣セレス》を右腕に宿したのであった。







――3年後、凶王ヴァーンは倒され災禍戦争は終結する。


《聖剣アレクサンデル》を持つ骨人スケルトンの武将と森人エルフの大賢者、そして《聖剣セレス》を携えた魔族エビルによって。


遅くなりましたorz

かなりの難産でした・・・

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