第49話 不届き者
気がつくと、レイシアたちの目の前に、アレン、王家の紋章のついた甲冑を着た騎士たち、そしてクロエがいた。
よく見ると、騎士たちの後ろには、宰相であるオズワルドもいる。
苦々しい顔をして、こちらをみていたが、レイシアの視線に気がつくと、すぐに無表情になった。
そんな中、アレンが一歩前に出る。
「命だけは助けてやる。さっさと武器を放棄しろ」
レイシアの喉元に突きつけられたナイフ。
それに込められたセドリックの力が強まった。
「なっ。なぜお前らがここにいるんだ」
アレンが冷酷な調子で答える。
「ここにいるバルト嬢が教えてくれた。彼女がフローリア嬢を探しに庭園に行った時、怪しい人影がいることに気がついたんだ」
そう言ってクロエの方を、アレンは見る。
クロエが頷く。
アレンは、レイシアたちの方を再び向いた。
「騎士たちを連れてきてよかった。こんな汚らわしいことを、まさか王宮でしようとしていたとは」
アレンの言葉に反応して、騎士たちが剣を抜く。
月の光が抜き身の刃に反射して、白く輝く。
ルシアンが一歩後ろに下がる。
セドリックがレイシアを盾にするように、前に一歩出る。
ルシアンが震えながらレイシアを指す。
「こ、コイツがどうなってもいいのか?」
セドリックが、ナイフでレイシアの首筋をなぞる。
アレンが眉間に皺を寄せる。
「大人しく投降しろ。もう一度言うぞ。命だけは助けてやる」
アレンの低い声が響く。
一瞬、レイシアを押さえるセドリックの手が動揺で緩み、ナイフが首元から離れたのが分かった。
今しかない。
レイシアは膝の力を抜いた。
そして体勢を低くして自分を拘束する腕からするりと抜けると、振り向いて思いっきりセドリックのことを両手で押した。
「うわっ!」
セドリックがよろけて、尻餅をつく。
「今だ!」
アレンの号令で、騎士たちがルシアンとセドリックに飛び掛かる。
セドリックがすぐに押さえ込まれる。
「もう大丈夫」
アレンがレイシアのことを庇うように抱きしめた。
レイシアはぎゅっと抱きしめ返した。
手が震えていた。
ほっとして、涙が伝った。
頭を優しく撫でられたのを感じた。
「くそ! お前ら! 俺は侯爵家の人間だぞ!」
ルシアンが叫びながら、飛び掛かってきた騎士を避けた。
くるりと横を向き、逃げ出す。
「捕まえろ!」
アレンが叫ぶ。
「誰が捕まるか!」
ルシアンがそう言って走っていく。
甲冑を着ている分、騎士たちの足は遅い。
ルシアンが角を曲がろうとした瞬間。
「そっちは塞いでいるぞ! ガハハ」
テオドールが曲がろうとした角の先から現れた。
「なっ!」
テオドールの後ろから、騎士が出てくる。
呆気に取られて足が止まったルシアン。
「捕まえろ!」
「ちくしょう! やめろ」
騎士たちがあっという間に、ルシアンの腕を吊り上げ、縄でぐるぐるに縛る。
悪態をつくルシアンを、テオドールが見下ろす。
「テオドール! ありがとう」
アレンたちが追いついた。
「殿下。これくらい、お任せあれ」
そう言ってテオドールがアレンに一礼して、にっこりと笑った。
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縛られて跪かされているルシアンとセドリックを、レイシアはアレンたちと一緒に見ていた。
レイシアはまだ手が震えていた。
アレンがその手をぎゅっと握りしめてくれる。
驚いてアレンの顔を見る。
アレンがにっこりと笑った。
心臓の音が少し高鳴ったのが分かった。
その時。
「よし、この不届者たちを殺せ」
レイシアが声のする方を向くと、オズワルドが騎士たちに命じていた。




