第38話 告白
創立祭の片付けも終わり。
クロエとテオドール、それから企画を手伝ってくれた老執事は、先に帰っていた。
そんな中、レイシアはアレンと共に学院の入り口に向かって、無言で歩いているところだった。
「話があるから、最後に二人で少し話したい」
そうアレンが深刻な表情で言うので、頷いたがアレンはさっきから黙りこくったままだ。
薄暗い学院の廊下を二人並んで歩いていく。
時折、遠くから生徒たちの談笑する声が聞こえてくる。
まだ打ち上げなどで、帰っていない生徒たちがいるみたいだ。
「レイシア」
廊下の途中でアレンが立ち止まった。
「どうしたの?」
アレンのアメジストのように透き通った紫色の瞳。その瞳が不安げに揺らいでいるのが分かった。
「……話があるんだ。少し庭園に寄ってもいいかな?」
どくん。心臓の音が高鳴るのが分かった。
口を開こうとする。カラカラに渇いていて言葉が出てこない。
「……分かったわ」
ようやく一言絞り出す。
「じゃあ行こう」
そう言ってアレンは振り向いた。
その背中はなぜか遠く見えた。
♦︎
庭園は月の光で明るく照らされていた。
庭園には色々な花が咲き誇っていた。
「わあ、綺麗!」
ここ最近、創立祭の企画の準備で忙しくて庭園に来られていなかった。
久しぶりに来たら、花はすっかり植え替えられていた。
もうチューリップはない。球根が植えられているだけのようだ。
「ねえ、レイシア。マムの花言葉を知ってる?」
「ええ。知っているわ」
二人の目の前には、一面に赤いマムが植えられている。
「『愛している』よね」
レイシアがマムの花を見ながら言った。
「そうだね」
レイシアはアレンの方を向いた。
アメジストのように透き通った紫色の瞳が見える。
その時だった。
「レイシア、愛している」
世界から音が消えた。
アレンの低い声が聞こえた気がしたけど、聞き間違いだろうか。
心臓の鼓動の音がやけに大きく聞こえる。指先の感覚が鋭敏になる。
耳が熱を持って、火傷しそうなほど熱い。
ごくり。唾を飲み込む。
「好きだ。ずっと好きだった」
アレンが一歩、レイシアの方に歩み寄った。
気のせいじゃなかった。
息が止まる。息が吸えない。
全身の神経が触られたような気がした。
「レイシア」
アレンがレイシアの目を見て、真っ直ぐ問いかける。
恥ずかしい。
アレンのことが直視できない。
レイシアは思わず下を向いてしまう。
なんとか、息を吸って吐く。
指先が震えるのを感じる。
思わず目を瞑る。
その瞬間、温かい体温を指先に感じた。
驚いて目を開ける。
アレンが手を優しく包み込んでいた。
どくり。
「君はどう思っているのか聞かせてほしい」
そう言ってアレンはニッコリと、少し赤くなった頬で笑った。




