第35話 表彰式
創立祭の当日。
来客者はすでに帰り、日も暮れた夕方。
学院の大きな室内運動用の建物の中にて。
「さて、これから創立祭の企画で、特に優秀だったと運営委員によって選ばれたものを表彰します」
入り口の正面奥にステージが設けられている。
そのステージ上で、正装をきた生徒が司会を務めており、優秀だった企画の発表をしている。
企画ごとに生徒達が並び、会場内のステージの方を見て、司会の話を聞いている。
レイシアは仲間と共に、その発表を聞いていた。
「レイシア、今日は本当にお疲れ様。選ばれるといいね」
レイシアの隣のアレンが発表を聞きながらそっと言う。
レイシアがアレン達だけに聞こえるように返事をする。
「そうね。でもそれ以上にありがとう。アレンも、クロエも、テオドールも。本当にみんなのおかげで、無事に終わらせることができたわ」
優秀賞を取った企画が次々と発表されていく。
レイシアはステージの方に目を向けて、黙って聞きつづける。
レイシア達の企画は選ばれない。
「ううん、本当にレイシアがみんなを引っ張ってくれたおかげだよ」
アレンが首を振りながら、小さな声で言った。
それを聞いたレイシアは、照れてしまい思わず俯く。
(色々あったけれど、本当に無事に終わってよかった)
無事に。そこまで考えたところで、ルシアンの顔がふと浮かんだ。
明日、学院長に今回の件で話があると言われている。
全ての決着はまだついていない。
レイシアは顔を上げた。
「さて、ここで最優秀賞の発表をいたします!」
賞の発表も大詰めみたいだ。
「最優秀賞。代表者ジュリエット・カルヴィール侯爵令嬢による企画。三年生有志による歌劇『建国王と春の乙女』です!」
拍手が巻き起こる。
(ダメだったなあ)
どこか期待していた。それだけにがっかりしていたが、清々しかった。
「レイシア……」
アレンが気を使ってレイシアに声をかける。
今度はレイシアが首を振る番だった。
「ううん、大丈夫。みんなでやった。これだけで、本当に満足よ」
レイシアがにっこりと笑った。
その時だった。
「レイシア、まだ何かあるみたいだぜ」
レイシアはステージの方を振り返る。
「さて、去年まではこれで終わりでしたが、来賓側の申し出があり、今年はもう一つ賞があります」
司会の男性が言葉を切る。
「今年は来賓の皆様に、最も印象に残った企画をお尋ねしていました。その結果、最も多くの支持を集めた企画に『来賓特別賞』を贈ります」
ざわめく生徒達。
レイシアはごくりと息を呑んだ。
「では、発表します」
司会の男性が口を開く。
「代表者レイシア・フローリア子爵令嬢による企画! 一日王族体験ができる『宮廷式接遇体験 〜王族御用達の茶菓とともに〜』です!」
(え、え、選ばれた……)
レイシアは思わず口を開けた。
これは悪戯じゃないのか。
そんな考えが一瞬頭をよぎる。
「レイシア!! やったね!」
「レイシア様! やりましたよ!」
「レイシア! やったな!」
次々と仲間が祝福してくれる。
けど、本当に受賞したのか、信じることができない。
「レイシア・フローリア嬢。前に出てきてください」
司会の男性がレイシアを呼んだ。
レイシアはおずおずと前に進んだ。
ステージへの階段を一歩一歩ゆっくりと上がり、司会の男性の前に立った。
「フローリア子爵令嬢。来賓から最も支持された企画を讃え、賞を授与します」
「ありがとうございます」
レイシアは一礼して賞状を受け取った。
拍手が巻き起こる。
レイシアはステージの上から、自分の方を向いている生徒達を見た。
みんな、純粋にレイシアのことを祝福していた。
侮蔑の色は感じられなかった。
(これ、嘘じゃないんだ……)
レイシアは、心臓が喜びで溢れたのがわかった。




