第33話 創立祭当日
創立祭当日。
その日は、秋らしく雲がまばらに散った快晴だった。
昼も少し過ぎた頃。
一つ目の大教室の隣の教室。
二十人ほどが入る教室で、レイシア達はテーブルを並べ、来客者達にお菓子と紅茶を振る舞っていた。
「なんでお前達が店を出しているんだ!!」
その時だった。
突然ルシアンの大声が響いた。
教室の入り口にルシアンが立っている。
紅茶を楽しんでいた来客者達は黙り込み、ルシアンの方を一斉に向く。
レイシアと共に接客していた老執事が、急いでルシアンの方に向かい、聞いた。
「お客様、どうされたのですか?」
ルシアンはそれを無視する。
「これはどういうことだ! お前らは何故! どうして!」
叫び出すルシアン。
来客者達が息を呑んでルシアンを見つめる。
「お客様。すみません、少し行って参ります」
レイシアは接客をしているお客様に一礼すると、ルシアンの方に向かった。
「どうしたのですか? ランベール侯爵令息様?」
「お前!! 卑怯だぞ! 何をした!」
顔を真っ赤にして、ルシアンがレイシアに詰め寄る。
レイシアはにっこりと笑った。
「何をしたって。普通に店を出しているだけですが?」
「おかしい! 出せるはずがないんだ! だって……」
そこまで言いかけて、ルシアンは黙り込んだ。
教室中の視線が集まっていることに気がついたらしい。
(このまま決定的なことを言ってくれれば良かったのに)
レイシアはため息を我慢して、クロエに目で合図をする。
クロエが頷く。
「ランベール侯爵令息様。それで、何の用ですか?」
「……何の企画で通したんだ」
「ああ、そんなことですか。紅茶とお菓子のペアリングですよ」
「嘘だ! それは俺たちが先に申請した!」
レイシアは淡々と言う。
「創立祭企画申請規約の第四条第五項にはこうあります」
レイシアは息を吸って、一気に言い切る。
「既に受理された企画と、主目的および提供形態が同一または著しく類似する企画は受理しない。ただし、使用する品目の一部が重複する場合でも、主目的または提供形態に明確な差異があり、別個の企画と認められる場合は、この限りではない」
「そ、それがどうした」
「これを聞いてもわからないのですか? 私たちは目的が異なる企画として、申請したんですよ」
ルシアンが顔を顰める。
「そんな規則くらいわかっている! お前らも紅茶と菓子のペアリングを提供しているんだろう? それなら喫茶店で同一になるはずだ」
レイシアはため息をついた。
「だから目的が違うと言っているじゃないですか。私たちが企画したのはただの喫茶店ではありません」
ルシアンが息を呑んだ。
「私たちが企画したのは、一日王族体験という企画です。王族御用達の茶葉に菓子。それらのペアリングを提供し、王族の休日を体験してもらうのが今回の企画です」
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
ルシアンが握りしめた拳を振り回し、地団駄を踏む。
「ありえない! 王族を騙るなんて不敬だぞ! お前らがまともなところと契約できるはずがないんだ! 俺たちが茶葉のブランドとは先に契約したんだから! その時にお前らとは契約できないようにしていた! この嘘つき、詐欺師め!」
レイシアはにっこりと笑った。
「それ、本気で言ってます?」




